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交通事故に関する用語集 か行

か行の用語

買い替え費用(差額) [かいかえひよう(さがく)]

事故時の車両価格から事故後の車両の売却代金(スクラップ代)を引いた差額のことです(スクラップ代を引くのは、事故車両にはスクラップ代分の価値が残っていることがあるからです。)。

(1)事故車両が物理的に不可能である場合、(2)修理自体は可能であっても修理費が車両の時価を超えてしまう場合、あるいは(3)車両の重要部分に重大な損傷を受けて買い替えが相当な場合は、買い替え差額の損害賠償が認められます。

外傷性 [がいしょうせい]

外傷性とは、外部から要因により傷害を負う場合を指します。交通事故などの衝撃により傷害を負う場合がその典型です。たとえば、外傷性脳損傷、外傷性頸部症候群(頸椎捻挫)、外傷性椎間板ヘルニア、外傷性ストレス障害(PTSD)など、交通事故による外部からの衝撃により受傷した場合があげられます。

交通事故で負ったケガについて損害賠償を求めるためには、交通事故によって負ったケガであるといえなければなりません。しかし、椎間板ヘルニアなどは経年性、つまり、これまでの長年の生活の中で発症してしまうこともあるため、それが交通事故によるものなのかどうかが問題となります。

外貌 [がいぼう]

外貌とは、頭(頭部)や顔(顔面部)、首(頸部)など、日常的に人の目に触れる部分のうち、腕や足など以外の部分をいいます。つまり、手足以外で人目に触れる部位のことをさします。

交通事故によって、外貌に人目につく程度を超えた瘢痕(あばた)や線状痕(線状の傷跡)などの傷痕が残ることを「外貌醜状」といい、後遺障害に認定される対象となります。外貌醜状が認定された場合、その精神的な苦痛に対する慰謝料(後遺障害慰謝料)や、普段の仕事や将来の職業を考慮した逸失利益などの損害賠償が認められることになります。

外貌醜状 [がいぼうしゅうじょう]

外貌醜状(がいぼうしゅうじょう)とは、文字通り「外貌」に「醜状」が残ってしまった場合の後遺障害をいいます。外貌とは、頭や顔、首など日常的に人の目に触れる部分のうち、腕や足など以外の部分、つまり、手足以外で人目に触れる部位のことをさします。そして、醜状とは、人目につく程度を超えて瘢痕(あばた)や線状痕(線状の傷跡)などの傷痕が残ることをいいます。

交通事故により、このような状態となってしまった場合、精神的な苦痛に加えて、普段の仕事にも影響が出ることが考えられます。そこで、外貌醜状という後遺障害を認定し、その精神的な苦痛(後遺障害慰謝料)や、将来の職業に対する影響(逸失利益)について損害賠償が認められることになります。

外貌醜状の場合、後遺障害の認定には書面審査だけでなく面接が要求される場合もあります。被害者の方にとっては精神的に負担となる場合もありますが、ご自身の受けた被害に対して適正な賠償を受けるためには、きちんと審査を受けることをおすすめします。

また、外貌醜状の場合、逸失利益が否定されたり、労働能力喪失期間が短期に制限されたりすることがあるので注意が必要です。保険会社などは、外貌醜状があっても仕事自体には影響しないということを主張してくるのです。しかし、職業によっては外貌醜状が理由で就けない場合もあり、現在の職業では影響がなくても、将来就こうとする職業には影響がある場合も考えられます。

このように、外貌醜状の後遺障害の賠償には、さまざまな問題が生じる可能性があります。困ったときは泣き寝入りするのではなく、早めに弁護士に相談することをおすすめします。

カウザルギー [かうざるぎー]

カウザルギーとは、外傷や手術の後に、傷は治癒しているのに痛みやしびれが続く場合をいいます。このような症状は、疼痛性感覚異常(CRPS)のひとつであり、神経損傷を伴う場合を「カウザルギー」と呼びます。逆に神経損傷を伴わない場合は、RSDと呼ばれます。

具体的な症状としては、激しい灼熱痛や疼痛、腫脹(炎症などが原因で体が腫れあがること)、関節拘縮(骨の萎縮やこわばり)、皮膚の変化(皮膚色の変化、皮膚温の低下、乾燥など)などが挙げられます。

カウザルギーは、痛みの部位や程度、持続時間、痛みの原因となる他覚所見の有無などを考慮して、後遺障害第7級~第12級が認められる余地があります。

加害者請求 [かがいしゃせいきゅう]

加害者が、被害者に損害賠償を支払った後に、自賠責保険会社に対して、保険金を支払うように請求することです。

ただし、多くの場合、加害者本人による対応ではなく、加害者の代わりに任意保険会社が対応する被害者請求の方法が主となっています。

格落ち(評価損) [かくおち(ひょうかぞん)]

車両の修理をしても、機能や外観に欠陥が残ったり、あるいは事故歴があるとの理由で価値が低下したりすることで発生した損害のことです。

格落ち(評価損)の金額は、修理費の一定割合として決めたり、財団法人日本自動車査定協会等による評価を考慮して決めたりします。

下肢 [かし]

「下肢」とは、股関節・ひざ関節・足関節(足首のこと)の3大関節と足指を含めた部分のことをいいます。後遺障害の等級認定においては、股関節とひざ関節、足関節の3つを下肢3大関節と呼びます。足関節から先の部分は、足指と呼び、後遺障害の等級認定の対象としては、下肢3大関節とは別の等級認定基準が用意されています。

交通事故により、下肢の全部や一部が失われてしまう場合を「下肢欠損障害」、動かなくなってしまうなどの障害が生じた場合は「下肢機能障害」として、それぞれ後遺障害が認められることになります。

下肢可動域検査 [かしかどういきけんさ]

足の骨折などで、三大関節(股、膝、足首)や足の指の可動域制限が疑われる場合に実施されることがある検査です。股は屈曲・伸展、外転・内転、膝と足の指は屈曲・伸展、足首は背屈・底屈を日本整形外科学会によって決定された関節可動域表示ならびに測定法にしたがって測定します。可動域が正常値に比べて、一定以上制限されていれば、運動機能障害が疑われます。

下肢伸展挙上テスト(SLR) [かししんてんけんじょうてすと(えすえるあーる)]

腰椎捻挫などで、足に痛みやしびれなどの症状がある場合に実施される検査です。患者を仰向けになって膝を伸ばし、検者(医師・理学療法士)が片方ずつ足を持ち上げます。痛みで足が一定以上に上がらない場合は、坐骨神経の障害が疑われます。

過失相殺・過失割合 [かしつそうさい、かしつわりあい]

交通事故を引き起こす原因となった、何らかの不注意のことを「過失」と呼びます。たとえば、前方不注意や携帯電話を操作しながら運転していた、スピード違反をしていた、一時停止を無視したといった事情は、すべて過失にあたることになります。過失は、当事者の一方だけにある場合もあれば、当事者の双方に過失がある場合もあります。その場合にどちらの過失が交通事故の原因になったかということを表す言葉として、「過失割合」という言葉があります。

被害者の方に発生した損害について、被害者自身の過失割合に基づいて被害者の方の損害賠償額から差し引くという制度は、過失相殺と呼ばれます。このように、交通事故によって発生した損害は、加害者と被害者の方との間で過失割合にしたがって公平に負担されることになるのです。

過失割合については、これまでの裁判例の積み重ねにより、事故の態様ごとに大体の目安が定められています。過失割合の目安は、別冊判例タイムズ16号や赤い本で示されています。この目安は、被害者の方の実感とはズレがある場合があるともいわれますが、保険会社との示談交渉や訴訟においては、この目安を無視することはできません。

被害者側にどの程度の過失があるかという過失割合の問題は、支払われる損害賠償額に直接影響する問題であり、争われることが多いポイントです。過失割合の争いは、専門的な知識と経験が必要ですので、弁護士への相談をおすすめします。

過剰診療 [かじょうしんりょう]

交通事故による賠償金として認められる治療費は、必要かつ相当な実費とされています。ですから、医学的な必要性や合理性が否定されてしまう診療行為(過剰診療)の場合、賠償が認められないことがあります。

過剰診療として賠償が認められないケースについては、裁判例が蓄積されていますので、自分のケースが過剰診療にあたるか不安な方は、弁護士に相談することをおすすめします。

家事従事者 [かじじゅうじしゃ]

現に家族のために家事労働に従事する人のことで、典型例は専業・兼業主婦(主夫)です。

家事従事者だからといって、休業損害逸失利益がないということにはなりませんので、お金をもらっていないからといってあきらめずに賠償を求められるか考えましょう。

その算定に当たっては、裁判所基準(裁判をしたならば認められる基準)では、女性労働者の平均賃金を基に算定され、パート代などの現実収入は、計算の基礎に入れません。
もっとも、現実収入が平均賃金よりも高い場合は、現実収入を計算の基礎とします。

可動域 [かどういき]

後遺障害における「可動域」とは、関節可動域を指しており、関節における異常を発見するための検査法をいいます。関節の障害について、健康な関節と比べてその運動範囲の制限などから、障害の程度を評価する手法です。

測定の仕方としては、角度計を計測する軸心(関節の中心)に当て、固定バーを固定軸の骨軸、移動バーを移動軸の骨軸に合わせます。動かす前の角度を測定したうえで、最大可動域まで5度刻みで自らの力で動かしていき、これを測定して、正常値や健康な逆側の関節と比較して、障害の有無を判断していきます。

仮渡金 [かりわたしきん]

最終的な示談だけでなく、内払の交渉すら待てないような特に経済的に困った状況の方のため、損害賠償責任や損害額が未確定の段階においても、自賠責保険会社から一定の金額を支払ってもらえるという制度です。

死亡事故の場合は290万円、傷害事故の場合はその内容に応じて5万円、20万円あるいは40万円の支給を受けることができます。

例えば、最も低い5万円をもらうには、11日以上の医師の治療が必要だという旨の診断書等があればよく、事案にもよりますが2週間程度で現実の支払までたどり着けるので、額はそれほど大きくありませんがお金に困っている人には有用な制度であり、実際にお金がなくて診断書を取るお金もないというような方には、5万円であっても大変貴重なお金ということになり、このような仮渡金の存在により助かった依頼者の方も少なくありません。
もっとも、仮に支払われているだけですので、本来支払ってもらえる額を超える場合は、その超えた額を返還しなければなりません。

カルテ [かるて]

患者の情報や診療の経過を記録したものです。正式には「診療録」と呼ばれます。法律には、医師は患者を診療した場合に必ずカルテをつけなければならないこと(医師法第24条1項)、カルテには5年間の保管義務があること(同条2項)等が定められています。最近では、医療情報の管理体制の強化やデータベース化・ネットワーク化の促進の観点から「電子カルテ」の導入も進められています。

交通事故によるケガの場合は、初診時の受傷内容、診察・診断内容、診療経過、処方薬や施術の指示内容等の記載があるのが一般的です。そのため、カルテの開示を受けることにより、診断書や診療報酬明細書(レセプト)に記載された傷病名、残存症状、治療の詳細などについて確認することができたり、後遺障害の認定等級に対する異議申立の立証資料に使うこともできます。

簡易生命表 [かんいせいめいひょう]

1年間の死亡状況が今後変化しないと仮定して、各年齢の人が1年以内に死亡する確率(死亡率)や平均してあと何年生きられるかという期待値(平均余命)を指標化したものです。簡易生命表は、厚生労働省が保健福祉水準を示す指標のひとつとして、推計人口や人口動態統計(概数)などをもとに毎年発表しています。

特に交通事故の被害においては、後遺障害や死亡事故による逸失利益を算定するために、簡易生命表の中にある平均余命が利用されます。

関節拘縮 [かんせつこうしゅく]

関節拘縮とは、関節を動かさないことなどにより、関節周辺の筋肉が固くなり、関節が曲がらなくなってしまったり、完全に伸びきらなくなってしまった状態、つまり、関節の動きが悪くなった状態をいいます。無理に動かそうとすれば痛みが生じることがあります。

交通事故により、関節拘縮のために関節がこれまでのように動かなくなり、その可動域に制限が認められる場合には、後遺障害の認定の対象となります。たとえば、肩関節が関節拘縮して可動域に制限が認められる場合、健側(健康な側)の肩と比べて可動域の4分の3以下の制限が認められれば第12級6号、2分の1以下に制限されている場合には第10級10号、用を全廃したもの、つまりほぼ動かなくなってしまった場合には第8級6号が認定される余地があります。

関節造影検査 [かんせつぞうえいけんさ]

注射針を関節内に刺して造影剤や空気を入れて、単純なレントゲン検査には写らない関節腔(関節の中の空間)の異常を調べることができます。たとえば、交通事故による上肢の後遺障害のひとつであるTFCC損傷の場合、関節造影検査によって、手首の関節から造影剤が傷付いたTFCCを通って漏出していることが確認できます。なお、関節造影検査はアルトログラフィーとも呼ばれます。

既往症 [きおうしょう]

現在は治癒していますが、過去にかかったことのある病気を既往症や既往歴(きおうれき)などと呼びます。交通事故の被害に伴う損害賠償の分野では、被害者の方の既往症により後遺症などの損害が発生・拡大した場合に、加害者と被害者の方との間の損害の公平な分担という法制度の趣旨にもとづき、賠償金が減額されることがあります。

たとえば、交通事故の受傷によって腰椎の椎間板ヘルニアになった場合、事故以前から被害者の⽅に既往症があったときは、保険会社から賠償⾦の減額を主張されることがあります。しかし、賠償⾦が減額され得る既往症は、加齢に伴う年齢相応の症状(いわゆる⽼化現象)とは区別されなければなりませんし、既往症をめぐる判断や交渉は難しいものとなりますので、交通事故に強い弁護⼠に相談することをおすすめします。

基礎収入 [きそしゅうにゅう]

基礎収入とは、交通事故による休業損害や逸失利益を算定する際に、その基礎となる収入のことをいいます。基礎収入の算定方法は、職種などにより異なりますが、基本的には事故前の現実収入額を基礎とします。

仮に、事故前の現実収入額が平均賃金を下回っていても、将来的に平均賃金程度の収入を得られる蓋然性を立証できた場合は、平均賃金額を基礎とすることもあります。事故前に現実収入が認められない家事従事者や未就労者については、原則として平均賃金額を基礎に算定することになります。

自営業の方の場合は、原則として確定申告の所得額で算定されることになります。中には確定申告の所得額では実際の収入が反映されないという場合がありますが、そのような言い分を保険会社に認めさせて、申告額以上の収入を認定させるのは容易ではありません。収入の実態の根拠となる資料をできる限り集めて強く訴える必要があります。

機能障害 [きのうしょうがい]

機能障害とは、欠損障害と異なり形態・事態の変更はないが、心理的・生理的な機能を喪失している、もしくは異常があることをいいます。

たとえば、交通事故によって手や足などの肢体が自由に動かなくなってしまった場合を「上肢機能障害」、「下肢機能障害」と呼びます。視力や聴力が著しく低下してしまった場合には、目や耳の機能障害があります。さらに、思考や記憶、感情などに異常が認められるなど、脳の機能障害もあります。脳の機能障害の中には、「高次脳機能障害」と呼ばれる深刻な症状もあります。

休業損害 [きゅうぎょうそんがい]

怪我をしたことにより、治癒あるいは症状固定までの期間、働くことができずに生じた収入の減少のことです。

特に貯蓄が少ない人、一人暮らしで毎月賃料を払って生活している人、大きいローンを抱えている人などは仕事ができないことで収入が途絶えてしまうと非常につらいことになりますので、この点は専門家に相談して適正な金額を請求していくべきです。

具体的な計算方法は職種等により異なりますが、かいつまんでいえば、(1)給与所得者については事故前3カ月の支給額を基礎に、(2)会社役員については取締役報酬のうち労働の対価と認められる部分を基礎に、(3)事業所得者については事故前年の確定申告所得額を基礎に、(4)家事従事者については女性労働者の平均賃金を基礎に、算定します。
(5)学生、生徒や無職者については、原則としては、休業損害は認められません。

休車損 [きゅうしゃぞん]

営業用車両が、事故によって使用できなくなった場合の、使用出来たならば得られたはずの利益を失ったという損害のことです。
相当な買い替え期間中あるいは修理期間中につき、認められます。

なお、代車料が認められる場合には、休車損は認められません。

共同不法行為 [きょうどうふほうこうい]

これは、法律上の概念で難しいので、具体例で説明します。

「Aさんは、甲さんを後部座席に乗せて、自動車を走行させていましたが、交差点を直進しようとしたところ、左側から出てきたBさんの自動車と出会い頭に衝突しました。
事故の原因は、Aさん及びBさんの双方が、前方をよく確認していなかったためでした。」という例のように、数人が、共同で、過失によって他人に損害を加えた場合のことをいいます。

このような共同不法行為の場合、加害者(AさんとBさん)は、被害者(甲さん)に対して、連帯して、損害賠償を支払う義務を負います。

つまり、甲さんは、損害賠償額全額の支払いを、Aさんに対してもBさんに対しても、求めることができます(もちろん、二重取りはできません。)。

筋萎縮検査 [きんいしゅくけんさ]

頸椎捻挫(むち打ち)や腰椎捻挫などで、手足にしびれや麻痺などの症状が生じた場合に実施されることがあります。手は肘関節の上下10cmの部分の上腕部と前腕部の周径を、足は膝関節の上下10cmの部分の大腿部と下腿部の周径をメジャーで測定します。しびれや麻痺などの症状のある側の手足が、症状のない側の手足に比べて細くなっている場合は、神経障害が疑われます。

刑事記録 [けいじきろく]

刑事記録とは、警察官や検察官が交通事故の加害者に過失運転致死傷罪(旧:自動車運転過失致死傷罪)などの刑事責任を問うために、その過程で作成する実況見分調書や供述調書などの記録をいいます。

交通事故で過失割合が争われている場合や、悪質なひき逃げなど、慰謝料の増額を求めたい場合には、刑事記録の記載が有利な証拠となることがあります。実況見分調書や供述調書、刑事事件での判決などには事故の態様や加害者の過失などについて記載されており、ひとつの証拠となりうるからです。

刑事記録の取得については、まず警察の捜査中の段階では、閲覧も謄写もできません。起訴されて裁判を行っている最中の場合には、裁判所に謄写を申し込むことができます。また、起訴されて確定した後や不起訴となった場合には、検察庁に閲覧・謄写を申し込むことができます。

頸椎捻挫 [けいついねんざ]

いわゆる「むちうち損傷」の1つで、頚の周りの筋肉・軟部組織が損傷を受け、後頭部痛、前頸部痛、背部痛の症状が見られるというものです。

一般的には、初期段階では安静にし、その後は局部固定、薬物療法や温熱療法が行われます。
なお、「むちうち損傷」には、他に「バレ・リュー症候群」と呼ばれるものや、「神経根症」と呼ばれるものがあり、それぞれ治療方法が異なります。

軽度外傷性脳損傷 [けいどがいしょうせいのうそんしょう]

外傷性脳損傷のうち、危険な状態ではないという意味で区別される脳損傷をさします。WHOを中心に欧米で認められた疾患概念で、MTBI(mild traumatic brain injury)と呼ばれることもあります。

「軽度(mild)」とついていますが、決して軽い症状ではなく、身体の麻痺や高次脳機能障害などの後遺症に至ることがあり、しかも、脳損傷ではなく、むち打ち損傷や頸椎捻挫などを受傷契機として発生することもあります。

長らくの間、自賠責保険の後遺障害等級認定基準では、CTやMRIなどの画像診断で脳の損傷を伴う異常所見がみられない場合は、後遺障害の等級認定が認められませんでした。そのため、裁判で争われることも多く、交通事故の被害者の方とそのご家族が苦しんでこられた経緯があります。

しかし、近年、大阪高裁や東京高裁などで軽度外傷性脳損傷を後遺障害として認定する判決が続き、すこしずつではありますが、司法の判断に光が差してくるようになりました。今後は厚生労働省など行政も交えた本格的な対応が待ち望まれます。

軽度の麻痺 [けいどのまひ]

交通事故により脊髄の損傷を受けた場合に、四肢麻痺、対麻痺、片麻痺、単麻痺などの麻痺が残ってしまうことがあります。このような麻痺には、程度に差があり、その程度の差に応じて後遺障害の等級認定が定められています。麻痺の程度の差としては、高度の麻痺、中等度の麻痺、軽度の麻痺に分けられます。

軽度の麻痺とは、障害のある上肢または下肢の運動性が多少失われている状態であり、上肢や下肢の基本動作がうまくできない、速度が遅いといった障害が認められる場合をいいます。

具体的には、上肢の軽度の麻痺の場合には、障害を残したひとつの上肢では、文字を書くことに困難を伴う場合をいいます。下肢の軽度の麻痺の場合には、日常生活は概ねひとりで過ごせるが、ひとつの下肢に障害があるため不安定で転倒しやすく、速度も遅い場合や、両方の下肢に障害があるため、杖もしくは装具を使わなければ階段を上がれない場合が軽度の麻痺にあたることになります。

経年性 [けいねんせい]

経年性とは、月日の経過とともに変化してしまったことをいいます。たとえば、経年性椎間板ヘルニアは、日々の生活における姿勢や仕事、スポーツなどの影響により発症してしまうことがあります。

交通事故の後に、椎間板ヘルニアと診断されたとしても、その治療費や後遺障害が損害賠償の対象となるためには、交通事故との因果関係が認められなければなりません。

つまり、椎間板ヘルニアが交通事故による外傷性のものなのか、それとも経年性によるものなのかという点が問題となります。これらは、具体的な事情の下で、交通事故の衝撃の程度や症状が現れた時点、MRI画像上での変形の程度など様々な点を考慮して判断されることになります。

頸部・胸腰部可動域検査 [けいぶ・きょうようぶかどういきけんさ]

頸椎・胸腰椎圧迫骨折などで、頸部・腰部の可動域制限が疑われる場合に実施されることがある検査です。頸部は前後屈、左右回旋、胸腰椎部は前後屈を日本整形外科学会によって決定された、可動域表示ならびに測定法にしたがって測定します。可動域が正常値に比べて一定以上制限されていれば、運動機能障害が疑われます。

欠損障害 [けっそんしょうがい]

交通事故により上肢や下肢の一部、手指、足指など身体の一部が失われてしまった場合を欠損障害と呼びます。このような欠損障害は、後遺障害の認定の対象となります。そして、後遺障害はその欠損した部位によって認定される等級が異なります。

たとえば、手の指の欠損であれば、両手の全部の指を失った場合は第3級5号、一方の手で指を全部または親指を含む4本を失った場合は第6級8号、親指を含む3本の指や親指以外の4本を失った場合は第7級6号といったように、その欠損の度合いによって等級が細かく定められています。

健側 [けんそく]

左右対称性に存在する人の足や手などについて、その片方が病気の場合、病気に侵されていない逆側を指します。つまり、病気のない正常な側のことです。たとえば、右の肩関節に後遺障害が残ってしまった場合、健康な左側の肩関節のことを健側と呼びます。

関節などの運動機能に障害が生じている場合、それが後遺障害にあたるかどうかは、その可動域が正常値にあるか、健側の値と比較して正常といえるかによって判断されることになります。このように関節などの機能障害を判断する上で健側が基準とされることになります。

腱反射 [けんはんしゃ]

交通事故により上肢や下肢に障害を負った場合、その程度によって後遺障害の等級認定がなされます。その際に、CTやMRIなどの画像検査のほか、症状の原因を確認するために神経学的検査(神経症状テスト)の結果などが参考とされます。

そのうち、神経学的検査のひとつの検査方法が腱反射です。腱反射は、人体にみられる生理的な反射を調べる検査です。具体的には、ゴムハンマー(打腱器)などで四肢の筋肉の腱を叩いて、筋肉が反射的に収縮する現象を検査します。中枢神経系に異常や障害があるときには、反射が亢進し(強くなり)、末梢神経系に異常や障害がある場合には、減退・消失します。そのため、神経疾患を診断する神経学的検査として頻繁に用いられています。

後遺障害 [こういしょうがい]

ケガの治療を続けてきたのに、一定の段階でそれ以上の治療効果が認められなくなった段階を症状固定といいます。そして、症状固定後に残ってしまった症状を後遺障害と呼びます。後遺障害は、医師による後遺障害診断書等に基づいて損害保険料率算出機構などで等級認定がなされ、認定された等級に基づいて自賠責保険や任意保険会社から損害賠償の支払いがなされることになります。

なお、よく似た言葉として、「後遺症」という言葉があります。後遺症も、痛みなどの症状が残るという点で後遺障害と同じですが、後遺症がある方のすべてが損害賠償請求が出来るわけではなく、「後遺障害」として等級認定がなされなければ、原則として慰謝料や逸失利益などの損害賠償を得ることができません。

後遺障害診断書 [こういしょうがいしんだんしょ]

後遺障害診断書は、後遺障害の等級認定手続に必要不可欠な書類であり、認定判断の中心的な資料です。通常の診断書とは異なり、A3サイズの用紙1枚が基本的な診断書となっており、歯科用とそれ以外の2種類があります。後遺障害の等級認定の判断は、原則的に書類審査によって行われますので、後遺障害診断書に適切な記載がされているかどうかが非常に重要です。

後遺障害診断書は症状固定後に主治医に作成してもらいますが、病院で診断を受ける前に、あらかじめ自覚症状をご自身で整理してください。そして、実際に主治医に診断してもらう際には、痛みやしびれなどに関する自覚症状を正しく、漏れなく、遠慮なく伝えることを心掛けてください。医師にすべてを任せてしまうと、ご自身が思っていたよりもずっと軽い症状を後遺障害診断書に記載されてしまったり、訴えていた症状が記載されないこともあり得ます。

後遺障害診断書において特に重要なのは、自覚症状を裏付ける「他覚症状および検査結果」の欄です。この欄に、残ってしまった症状とそれを裏付ける医学的な所見を具体的に記入してもらわなければなりません。どのような症状の場合に、どのような検査が必要かについては、後遺障害の内容に応じて個別具体的に異なります。等級の認定に関する専門的な知識と経験が必要となりますので、詳しくは弁護士までご相談ください。

「診断書であるからには医師に任せておけば大丈夫では?」と思われるかもしれませんが、そうではありません。病院にいる医師は、診察・診断や、治療を行う専門家です。そのため、症状固定後(≒治療した後)に、後遺障害の等級認定申請を行う専門家ではないのです。

後遺障害診断書
後遺障害診断書(歯科)

後遺障害の異議申立 [こういしょうがいのいぎもうしたて]

交通事故による後遺症が残ってしまった場合、その後遺症が後遺障害とされ、慰謝料や逸失利益などの賠償を受けるためには、原則として後遺障害の等級認定がなされなければなりません。そのためには、損害保険料率算出機構などの認定機関に申請を行い、等級の認定を得る必要があります。

仮に、その認定結果が誤っている場合や満足のいく認定結果が出なかった場合には、異議を申し立てることによって、すでになされた認定を覆す余地があります。異議申立に回数制限はありませんが、前回の認定時とは異なる医学的資料を補充するなど、認定を覆すだけの根拠や資料を提示しなければ、また同じ判断がなされてしまいます。

つまり、後遺障害の認定申請において異議申立が認められるためには、認定に必要な検査を受け、異議申立書の中で前回の認定を覆すに足りる理由を主張・立証していかなければなりません。高度の医学的・専門的な知識や経験が必要となりますので、弁護士に相談することをおすすめします。

後遺障害の等級認定 [こういしょうがいのとうきゅうにんてい]

後遺障害の等級認定とは、残ってしまった後遺障害が自賠法施行令の定める第1級から第14級までの等級のうち、どの等級に該当するのかについて、損害保険料率算出機構の内部組織である自賠責損害調査事務所が判定することをいいます。

そして、後遺障害の等級は、後遺障害の内容やその程度に応じて定められていますし、後遺障害慰謝料や逸失利益の金額も等級に応じたものとなります。そのため、適切な等級に認定されることが非常に重要となります。

等級認定を受ける手続としては、まずは医師に後遺障害診断書を作成してもらうところから始まります。次に、一般的な場合、加害者の保険会社から調査事務所に対して「事前認定」の申請がなされます。申請に対する認定結果は、保険会社を経由して被害者の方に返されます。

これに対して、被害者自身(や代理人の弁護士)が等級認定の申請を行う場合を「被害者請求」と呼び、自賠責保険会社に対して申請書や資料一式を直接請求します、そして、自賠責保険会社から等級の認定結果を受けることになります。

このように、後遺障害の等級認定は、加害者の保険会社に任せて手続を進めてもらう事前認定と、被害者の方が積極的に関与する被害者請求があります。

事前認定は、手間がかからないという利点がありますが、どのような申請がされているのか被害者自身にはわかりません。保険会社は被害者の方が高い等級の認定を受け、賠償金額が高額になることに必ずしも協力的ではありませんので、適切な等級が認定されないおそれもあります。

適切な等級認定を受けるためには、等級認定申請や異議申立を被害者請求によって行うのが望ましいでしょう。

高次脳機能障害 [こうじのうきのうしょうがい]

高次脳機能障害とは、交通事故などにより脳に外傷を負ってしまったことが原因で、記憶障害や注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害などが生じる場合をいいます。しかし、そのような症状がある場合でも、それが高次脳機能障害といえるか、交通事故によるものなのかどうかという点の判断は難しく、交通事故による後遺障害として認められないことも少なくありません。

また、高次脳機能障害は、それが後遺障害であることに気づかないことも少なくありません。交通事故前と比べて記憶や注意能力などの変化を自身が感じたり、変化について周囲の人から指摘された場合には、早めに専門の医師や弁護士に相談することが重要です。

交通事故証明書 [こうつうじこしょうめいしょ]

交通事故証明書は、交通事故がいつあったのか、交通事故がどこで起こったのか、交通事故の当事者は誰か、当事者の連絡先はどこか、当事者の自賠責保険会社はどこか、などの客観的な情報が記されている書面です。

自賠責保険会社に対して被害者請求を行ったり、訴訟を行ったりする際に必要となりますが、その際は自動車安全運転センターというところから発行してもらうことになります。

発行してもらうには、最寄りのセンター事務所の窓口で交付を受けるほか、郵送、インターネットでの取得も可能です。
なお、交通事故証明書の取得にかかる手数料は、1通あたり600円(税込)です。交通事故証明書を相談頂く前に用意して頂けると、自賠責保険加入の有無、事故態様、警察がどちらの責任が重いと考えているのか等の情報が分かりますので、弁護士からのアドバイスを充実させることができます。

高度の麻痺 [こうどのまひ]

交通事故により脊髄の損傷を受けた場合に、四肢麻痺、対麻痺、片麻痺、単麻痺などの麻痺が残ってしまうことがあります。このような麻痺には、程度に差があり、その程度の差に応じて後遺障害の等級認定が定められています。麻痺の程度の差としては、高度の麻痺、中等度の麻痺、軽度の麻痺に分けられます。

高度の麻痺とは、障害のある上肢または下肢の運動性や姿勢を維持する力がほとんど失われてしまっている状態や、障害のある上肢または下肢の基本動作(下肢においては歩行や立つこと、上肢においては物を持ち上げて移動させること)ができない状態をいいます。

具体的には、上肢や下肢が、完全に硬直もしくはそれに近い状態にあることをさします。上肢の高度の麻痺の場合には、三大関節および5つの手指いずれの関節も自ら運動よって可動させることができないこと、またはこれに近い状態にあること、障害のある上肢で物を持ち上げて移動させることができない場合などが、高度の麻痺にあたります。いっぽう、下肢の高度の麻痺の場合には、三大関節のいずれも自分で動かすことができない、またはこれに近い状態である場合や、ひとつの下肢で運動性や立って支える力がほとんど失われてしまったような場合は、高度の麻痺にあたることになります。

骨萎縮 [こついしゅく]

骨萎縮とは、骨形成よりも骨吸収のほうが多い状態となり、骨量が減少することで骨が縮んでしまうことをいいます。骨の形成は、骨芽細胞(こつがさいぼう)が担っており、骨の吸収は破骨細胞(はこつさいぼう)が骨を溶かします。正常な骨の場合、骨吸収と骨形成のバランスが保たれた新陳代謝が行われますが、骨萎縮の場合は、そのバランスが崩れて骨吸収のスピードのほうが速くなってしまいます。
骨萎縮は寝たきりの状態などによっても起こり得ますが、「ズデック骨萎縮」は、交通事故による骨折によって引き起こされることがあります。骨折によりギブスをしているうちに、骨からカルシウムが抜け出て骨の強度が低下し、疼痛などの痛みが発生します。同時に、関節拘縮(関節が固くなり動きが制限される)や皮膚の萎縮、むくみ(浮腫)などを伴ったりします。そのため、疼痛性感覚異常として、CRPSRSDの傷病名として診断されることもあります。

コース立方体テスト [こーすりっぽうたいてすと]

頭部外傷などで、高次脳機能障害が疑われる場合に非言語性の能力を図るテストとして実施されることがあります。各面が赤、白、青、黄、赤と白、青と黄に塗り分けられた3センチの立方体を組み合わせて、難易度順に並べられた17問の模様を作る課題を与えられます。各課題に正解するまでにかかった時間により得点化されて、高次脳機能障害の程度を判断します。