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電動キックボードの交通事故多発!守るべき交通ルールや事故時の対処法を解説

[ 公開日:2024/10/09 ] [ 更新日:2024/10/09 ]

手軽な移動手段として利用者の多い 「電動キックボード」。
規制の緩和やシェアリングサービスの増加により利用が拡大した一方で、交通ルール違反や事故が多発しています。
この違反や事故が多い要因の一つとして、有識者などから指摘されている「利用者の交通ルールの理解不足」があります。

そこで、このコラムでは、「電動キックボードとはどのような乗り物なのか」をご説明したうえで、守るべき交通ルールや交通事故が起きた場合の対処法などについて詳しく解説します。

この記事でわかること
  • 電動キックボードの特徴と注意点
  • 電動キックボードを運転する際に適応される交通ルール
  • 電動キックボードで交通事故を起こしたときの対処法
目次

電動キックボードとは

電動キックボードとは、車輪が付いた板に電動式モーターが取り付けられた乗り物のことです。キックボードの前方に取り付けられているハンドルを両手で握り、両足をキックボードの前後に置いて運転します。

電動キックボードによる事故が増えている

2023年7月の法改正で「特定小型原動機付自転車」に分類される電動キックボードの運転には、原付免許が不要となりました。気軽に乗れるようになり利用が拡大した半面、いろいろな状況での違反や事故が多発し2023年7月から2024年7月までに29,431件(2024年9月6日時点。警察庁)が検挙されています。

また、警視庁によると、電動キックボードの交通人身事故数に占める単独事故の割合は約41.7%とのことです。これは、自転車の約28.5%、二輪車(原付含む)の約15.1%に比べて高い割合です(令和5年1月~7月末。警視庁交通部チラシ)。

これは、車輪が小さいうえ、立って乗る形状であるため、段差や急ブレーキなどでバランスを崩しやすい、濡れた路面やマンホールで滑りやすい、などというのが主な原因のようです。また、スロットルの操作の加減によって急発進のおそれがあるなど、一般的な自転車などと違う性能を備えていることも事故の多さに繋がる可能性があります。

安全に走行するために、急発進・急ブレーキは避け、段差や濡れたところなどは速度を落として通る、転倒時の頭部保護のためヘルメットを着用する、といった注意を怠らないようにしましょう。

電動キックボードは基本的には原付バイク扱い

道路交通法上の原付(原動機付自転車)に分類されている電動キックボード。電動キックボードによる交通事故が起こった場合には、基本的には原付バイク事故と扱いは同じです。

ただし、2023年7月1日に施行された道路交通法の一部改正により、電動キックボード等の交通ルールが変わり、運転免許がなくても乗れる電動キックボードの区分が新設されました。

車両区分一般原動機付自転車特定小型原動機付自転車
原動機の定格出力0.60キロワット以下0.60キロワット以下
免許の必要性必要不要
最高速度30km/h20km/h以下※
  • 速度抑制装置で制御

加えて、下記の基準をすべて満たす電動キックボードが、特定小型原動機付自転車です(改正道路交通法施行規則第1条の2の2)。

  1. 長さが190センチメートル以下であること
  2. 幅が60センチメートル以下であること
  3. 原動機として、定格出力が0.60キロワット以下の電動機を用いること
  4. 走行中に最高速度の設定を変更できないこと
  5. AT(オートマチック・トランスミッション)など、クラッチの操作を要しない機構がとられていること
  6. 最高速度表示灯が備えられていること(走行中緑色点灯)

電動キックボードの運転時に適応される交通ルールと違反時の罰則

電動キックボードには、一般原動機付自転車に該当するものと特定小型原動機付自転車に該当するものがあり、それぞれ公道を走る場合の主な交通ルールの内容や、それに違反した場合の罰則が異なります。

電動キックボード運転時の主な交通ルール一般原動機付自転車特定小型原動機付自転車
原動機付自転車の運転免許必要不要
年齢制限運転免許に準ずる16歳以上
ヘルメットの着用義務努力義務
保安装置の装着必要必要(方向指示器など装着義務のないものもあり)
自賠責保険への加入必要必要
ナンバープレートの取付け必要必要
軽自動車税の支払い必要必要
走行場所車道車道・自転車道

運転免許の有無

一般原動機付自転車の場合

運転免許(普通自動車免許、原動機付自転車免許など)が必要です(道路交通法第85条1項、第64条1項)。

■無免許で電動キックボードを公道で運転した場合の罰則
<刑事処分>
3年以下の懲役または50万円以下の罰金(道路交通法第117条の2の2第1項第2号)

<行政処分>
違反点数25点

■無免許の人に電動キックボードを貸与した場合の罰則
無免許運転をする可能性のある人に電動キックボードを貸した場合、無免許運転をした人と同じ罰則が科されます。

■免許不携帯の場合の罰則
反則金3,000円

特定小型原動機付自転車の場合

16歳以上であれば原付運転免許不要で運転できます(改正道路交通法第64条 )。

■16歳未満の者が電動キックボードを公道で運転した場合の罰則
<刑事処分>
6ヵ月以下の懲役または10万円以下の罰金

■16歳未満の者に電動キックボードを貸与した場合の罰則
<刑事処分>
6ヵ月以下の懲役または10万円以下の罰金

ヘルメットの着用義務

一般原動機付自転車の場合

公道を走るときはヘルメットを着用する義務があります(道路交通法第71条の4 第2項)。

■ヘルメット着用なしで電動キックボードを公道で運転した場合(乗車用ヘルメット着用義務違反)の罰則
<行政処分>
違反点数1点

特定小型原動機付自転車の場合

ヘルメットの着用が努力義務に緩和されました(改正道路交通法第71条の4第3項)。

なお、シェアリングサービスの提供する電動キックボードでは、ヘルメットの着用は任意とされていますが、過去に頭を打ったことを原因とする死亡事故が起きていることから、着用されることをおすすめします。

保安装置などの装着

一般原動機付自転車の場合

道路運送車両法および道路運送車両の保安基準に基づいて、下記の装置を装着する必要があります 。

  • 前照灯(ヘッドライト)
  • 番号灯、尾灯(テールランプ)、制動灯(ブレーキランプ)および後部反射器
  • 警音器(クラクション)
  • 消音器
  • 方向指示器(ウィンカー)
  • 後写鏡
    速度計

■整備不良の罰則
<刑事処分>
3ヵ月以下の懲役または5万円以下の罰金

<行政処分>
・制動装置等の場合:違反点数2点 、反則金6,000円
・尾灯等の場合:違反点数1点 、反則金5,000円

特定小型原動機付自転車の場合

下記については装着義務がありません。

  • 番号灯
  • 尾灯
  • 制動灯
  • 方向指示器
  • 速度計

もっとも、制動灯や方向指示器を装備していない場合には手信号で合図を行わなければなりません。

自賠責保険への加入義務

一般原動機付自転車と特定小型原動機付自転車のどちらの場合でも、自動車損害賠償責任保険または自動車損害賠償責任共済に加入しなければなりません(自動車損害賠償保障法第2条 1項、第5条 )。
自賠責保険は、自動車損害賠償保障法で、原動機付自転車を含むすべての自動車に加入が義務付けられている強制保険です。
ただし、自賠責保険には支払限度額があります。交通事故を起こした場合に備えて任意保険にも加入することをおすすめします。

■無保険運行の罰則
<刑事処分>
1年以下の懲役または50万円以下の罰金(自動車損害賠償保障法第86条 の3第1項第1号)

<行政処分>
違反点数6点

ナンバープレートの取付け

一般原動機付自転車と特定小型原動機付自転車のどちらの場合でも、各市町村の条例で定められているとおり、車両登録とナンバープレート(標識)の見やすい場所への取付けが義務付けられています。

■ナンバープレート取付けなしで運転した場合(公安委員会遵守事項違反)の罰則
<刑事処分>
5万円以下の罰金

<行政処分>
反則金5,000円

軽自動車税の支払い

電動キックボードには毎年、 原動機付自動車としての軽自動車税という税金がかかります。原動機付自転車の軽自動車税の金額は排気量によって異なります。

■原動機付自転車の軽自動車税(2024年9月時点)
・90cc以下:年間2,000円
・90cc超125cc以下:年間2,400円

違反者への講習受講の義務付け

特定小型原動機付自転車を運転する際に、一定の違反行為(危険行為17類型)を3年以内に2回以上反復して行った者に対して、講習の受講が義務付けられています。

<対象>
特定小型原動機付自転車乗車中に信号無視等の危険行為(17類型)で、交通違反での取締りもしくは交通事故での送致を、3年以内に2回以上反復して行った人。

<受講時間>
3時間

<受講手数料>
6,000円

<罰則>
受講する命令を受けたにもかかわらず受講しなかった場合、5万円以下の罰金

電動キックボードの問題点

近所への移動などの際、気軽に乗れて便利な電動キックボードですが、法改正後に事故件数が急増したというニュースを耳にしたことのある方もいらっしゃるのではないでしょうか。
電動キックボードによる交通事故が増えているわけをきちんと理解しておきましょう。

運転に原付免許が必要であることの周知が不十分

原付免許というと、多くの方が思い浮かべるのは原付バイクではないでしょうか。
上記でご説明したとおり、時速20キロメートル以上を出せる電動キックボードには原付免許が必要ですが、残念ながらそれを知らない人がまだまだ多い状況です。
免許が必要な乗り物であることを知らずに運転した結果、重傷を伴う事故に繋がってしまうケースもあるのです。

インターネットで安い製品を気軽に購入可能

都市部で歩いていたら、電動キックボードが横を通り過ぎて行ったという経験をしたことのある方もいらっしゃるでしょう。
電動キックボードが増えている理由としては、インターネットで簡単に購入できるということもあります。価格も、安いものでは数万円であり、原付バイクがその数倍することを考えれば、気軽に購入しやすいため、急速に普及した現状に納得できます。

電動キックボードによる交通事故が発生!どうすればいい?

警察に通報

まず、警察に交通事故が起きたことを通報します。警察への事故の届け出は、のちの損害賠償請求に必要な「交通事故証明書」の発行をするためにも重要です。

なお、ケガをしている場合は必ず人身事故として届け出を行います。物損事故では実況見分を行わないため、過失割合などの証拠となる「実況見分調書」が作成されず、示談交渉で不利になる可能性があるからです。

ケガをしているのに「物損事故」で処理されてしまった場合には、早急に管轄の警察署で人身事故への切替えを行うようにしましょう。

保険会社に連絡

任意保険に加入している場合には、保険会社にも交通事故の被害にあったことを連絡しましょう。事故から日数が経ってしまうと、保険金が受け取れなくなることもあり得ます。
手続をスムーズに進めるためにも、可能な限り早く連絡することをおすすめします。

痛みがなくても病院で診察を受ける

事故現場での対応が終了したら、すぐに病院で診察を受けてください。痛みやしびれといった自覚症状がなくても必ず受診しましょう。事故直後はケガがないと思っていても、しばらく経ってから症状が現れる場合があります。

事故でケガをした場合は、医師から「完治」または「症状固定」と診断されるまで、きちんと通院し治療を続けましょう。症状固定とは「これ以上治療を続けても症状の回復・改善が期待できなくなった状態」を指します。

後遺障害等級認定の申請

医師に「症状固定です」と判断された時点で何らかの後遺症が残った場合には、後遺障害等級認定の申請を行います。

後遺障害等級認定とは、交通事故によるケガが「交通事故による損害である」と認めてもらうことです。後遺障害等級が認定されるかどうかで、交通事故被害者の方が受け取れる賠償金額が決まります。

後遺障害等級認定を受けられる条件や、後遺障害等級認定の手続については下記関連コラムをご確認ください。

加害者に損害賠償を請求

電動キックボードに衝突されて被害を受けた場合、被害者が加害者に請求できる慰謝料や賠償金は、乗用車による交通事故被害と同様です。

請求できる主な損害
事故によって傷害を負った場合治療関係費
入通院慰謝料
休業損害
事故によって傷害を負ったうえ後遺障害が残った場合後遺障害慰謝料
後遺障害逸失利益
事故によって被害者が死亡した場合死亡慰謝料
死亡逸失利益
葬祭関係費

交通事故にあったことで発生した上記のような損害について適切に金額を算出し、 加害者に請求していきます。
それぞれの場合に請求できる損害の項目や相場について詳しく知りたい方は、下記をご覧ください。

電動キックボードの過失割合は算定が難しい

これまでご説明したとおり、電動キックボードは基本的に原動機付自転車と同様に扱われます。そのため、過失割合の算定は原動機付自転車による事故を参考にすると思われます。

ただし、法改正により新しく基準が設定された「特定小型原動機付自転車」については、下記のような理由から、過失割合について加害者側ともめる可能性が高いです。

  • 運転に免許が不要、保安装置の装備が簡易であるなど、原付に比べてルールが緩い
  • 特定小型原動機付自転車による事故の事例や判例が少ない(過失割合は過去の事例を参考に決めるものであるため)

まとめ

2023年7月の法改正後、利用が一気に拡大した電動キックボードですが、交通違反や交通事故が増加していることが問題視されています。実際、歩行者に大ケガを負わせたケースもあり、利用者への交通ルールの周知徹底などが叫ばれています。

電動キックボードは、道路交通法上で「原動機付自転車」として扱われます。そのため、規制の緩い特定小型原動機付自転車であっても、自賠責保険への加入やナンバープレートの装着などが必要であり、違反すると罰則を科される可能性があります。

また、歩行者に重傷を負わせる事故に加え、被害者のいない単独事故で重傷を負うケースもよく聞かれるため、電動キックボードの特性についても十分に理解しておくことが重要です。

せっかくの便利な乗り物を走る凶器に変えないよう、電動キックボードを運転する際は、交通ルールに従って安全運転を心がけていただきたいと思います。

この記事の監修者
中西 博亮
弁護士 中西 博亮(なかにし ひろあき)
資格:弁護士
所属:東京弁護士会
出身大学:岡山大学法学部,岡山大学法科大学院
私は、交通事故案件に特化して取り組んでおり、これまで多数の案件を解決してきました。加害者側の保険会社は交通事故の被害者の方に対して低い慰謝料しか提示しないため、正当な補償を受けられない被害者が多いという実情があります。被害者の方に正当な補償を受け取っていただけるよう、私は日々、被害者の方のお声を聞き、被害者の方に代わって加害者側の保険会社と戦っています。