後遺障害1級の症状と認定基準|1級の慰謝料相場はいくら?
後遺障害1級は、交通事故の後遺障害のなかでもっとも程度が重く、失明や寝たきり、手足を失った場合などが認定されます。特に、要介護と認められる症状は、身体機能や精神機能に極めて重度の障害が生じており、日常生活において常に介護が必要です。
このように、後遺障害1級に認定された場合、被害者の生活に極めて大きな影響をおよぼすため、高額な後遺障害慰謝料や逸失利益などを請求することができます。
そこで、このコラムでは、後遺障害1級の認定基準や具体的な症状、慰謝料の相場、受けられる公的支援や補償について解説します。
- この記事でわかること
-
- 後遺障害1級の認定基準と具体的な症状
- 後遺障害1級に認定された方が受け取れる示談金の内訳
- 後遺障害1級で受けられる給付金や支援
- 目次
後遺障害1級の認定基準と症状
後遺障害1級の認定基準には、「別表第1」と「別表第2」の2種類があり、常に介護を要するかどうかで分けられています。
さらに、症状に応じて1~6の号に分類されます。
介護を要する後遺障害等級(別表第1) | 症状 |
---|---|
1級1号 | 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの |
1級2号 | 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、常に介護を要するもの |
介護を要さない後遺障害等級(別表第2) | 症状 |
---|---|
1級1号 | 両眼が失明したもの |
1級2号 | 咀嚼及び言語の機能を廃したもの |
1級3号 | 両上肢をひじ関節以上で失ったもの |
1級4号 | 両上肢の用を全廃したもの |
1級5号 | 両下肢をひざ関節以上で失ったもの |
1級6号 | 両下肢の用を全廃したもの |
以下では後遺障害1級の具体的な認定基準と症状について詳しく解説します。
介護を要する後遺障害1級(別表第1)
後遺障害1級1号|神経系統の機能や精神に著しい障害がある
要介護の1級1号の症状は「神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの」です。
具体的には、高次脳機能障害、外傷性脳損傷、脊髄損傷などにより、食事や入浴、排せつ、着替えといった生命の維持に必須な活動ができない場合に認定されます。
そのほか、脳にダメージを負ったことで、高度の認知症や情緒・意欲の調整がうまくいかないため、常時監視が必要となった場合も対象です。
後遺障害1級2号|胸腹部の臓器の機能に著しい障害がある
要介護の1級2号の症状は「胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、常に介護を要するもの」です。
1級1号の脳や神経を損傷した場合とは異なり、主に呼吸器障害により、食事や入浴、排せつ、着替えといった生命の維持に必須な活動ができない場合に認定されます。
要介護ではない後遺障害1級(別表第2)
後遺障害1級1号|両眼を失明した
要介護ではない1級1号の症状は「両眼が失明したもの」です。
具体的には、光の明暗がまったくわからない、もしくは光の明暗が辛うじてわかる状態である場合に認定されます。
なお、これには、眼球を摘出するなどして両眼の眼球を失った場合も含まれます。
後遺障害1級2号|咀嚼と言語の機能を失った
要介護ではない1級2号の症状は「咀嚼及び言語の機能を廃したもの」です。
具体的には、流動食しか食べられず、4種の語音のうち3種以上の発音ができなくなってしまった状態に認定されます。
4種の語音 | 子音 |
---|---|
口唇音 | ま行、ぱ行、ば行、わ行、ふ |
歯舌音 | な行、た行、だ行、ら行、さ行、しゅ、し、ざ行、じゅ |
口蓋音 | か行、が行、や行、ひ、にゅ、ぎゅ、ん |
喉頭音 | は行 |
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目・耳・鼻・口の後遺障害とは
後遺障害1級3号|両腕のひじより上または根本を切断した
1級3号の症状は「両上肢をひじ関節以上で失ったもの」です。
具体的には、下記のいずれかの状態に該当する場合に認定されます。
- 肩関節で肩甲骨と上腕骨を切り離す
- 肩と肘の間で腕を切断する
- 肘関節で上腕骨と前腕の骨(橈骨と尺骨)を切り離す
後遺障害1級4号|肩から下の両腕が動かない
1級4号の症状は「両上肢の用を全廃したもの」です。
具体的には、両腕の肩関節・ひじ関節・手関節のすべてが強直し、かつ、手指がすべて動かなくなった状態になった場合に認定されます。
なお、これには、上腕神経叢(腕から手の部分の5つの神経が集まって交差している部分)が完全に動かない状態にある場合も含まれます。
後遺障害1級5号|両脚の膝より上または根本を切断した
1級5号の症状は「両下肢をひざ関節以上で失ったもの」です。
具体的には、下記のいずれかの状態に該当する場合に認定されます。
- 股関節で骨盤と大腿骨を切り離す
- 股関節と膝の間で脚を切断する
- 膝関節で大腿骨と下腿の骨(脛骨と腓骨)を切り離す
後遺障害1級6号|股関節より下の両脚が動かない
1級6号の症状は「両下肢の用を全廃したもの」です。
具体的には、両脚の股関節・ひざ関節・足関節のすべてが強直した状態になった場合に認定されます。
なお、これには、足指の全部が強直した場合も含まれます。
後遺障害1級の示談金
後遺障害1級に認定された場合、後遺障害慰謝料や逸失利益などを請求することができます。
また、将来の介護が必要となった場合には介護費用なども請求することができます。
後遺障害1級の後遺障害慰謝料の相場
後遺障害慰謝料には、「自賠責保険基準」、「任意保険基準」、「弁護士基準(裁判所基準)」の3つがあり、基準によって受け取れる賠償金額が異なります。このなかで、通常もっとも高額となるのが弁護士基準です。
加害者側の保険会社は、自賠責保険基準もしくは任意保険基準による金額を提示してくることが多く、弁護士基準より低い金額になります。
後遺障害等級 | 自賠責保険基準 | 弁護士基準 |
---|---|---|
常に介護を要する後遺障害1級1号 | 1,650万円(1,600万円) | 2,800万円 |
介護を要さない後遺障害1級1号 | 1,150万円(1,100万円) | 2,800万円 |
- ※()内は2020年3月31日以前に発生した事故の場合
後遺障害1級に認定されるようなケースでは、後遺障害慰謝料の金額は高くなることが多く、それにしたがって自賠責保険基準と弁護士基準の差額も大きくなります。
低い基準で算定されて損をすることのないよう、弁護士基準での算定をおすすめします。
後遺障害1級の逸失利益の計算方法
逸失利益とは、交通事故にあわなければ将来得られたはずの利益のことをいいます。
後遺障害1級と認定された場合、労働能力喪失率(後遺障害の等級に応じた労働能力の喪失率)は100%とされています。
後遺障害1級と認定された場合、逸失利益は下記の計算式で計算します。
<逸失利益の計算式>
基礎収入×労働能力喪失率100%×(労働能力喪失期間に対するライプニッツ係数)
<計算例>
Aさん(男性、35歳、会社員、年収500万円)
500万円×100%×20.39=1億195万円
このように、完全に労働能力が失われたと判断されたケースの逸失利益は高額となる可能性が高いです。
介護を要する後遺障害1級の将来の介護費用
後遺障害1級と認定され、医師の指示もしくは症状の程度により介護の必要がある場合には、被害者の方の介護に必要な将来の介護費用を請求することができます。
将来の介護費用には下記のものがあります。
■将来介護費
将来の介護に必要となる費用
例)・看護師・介護福祉士などによる介護サービスを受ける費用(10,000円~30,000円/日)
・家族などの近親者が介護を行う場合の日額(8,000円/日)
■消耗品費
おむつなど
■自宅改装費等
車両の改造費や自宅(出入口・トイレ・風呂場など)の改築費用
■器具等購入費
介護のために必要となる器具や装具などの購入費用
介護用ベッド・車いすなどの介護用品の購入費用・買替え費用・レンタル費用
なお、介護の必要性が認められるポイントとしては、下記の2点が挙げられます。
- 日常生活を送るための手助けや監視、声かけが欠かせない(身体的な手助けに加え、認知症や情緒不安定などのために監視が必要な場合も含む)
- 状態の改善が将来にわたり見込めない
将来の介護費用の計算方法
将来の介護費用の計算式は、下記のとおりです。
<将来の介護費用の計算式>
介護費の日額×365日×(平均余命のライプニッツ係数)
<計算例>
2020年4月1日以降に発生した交通事故でケガをした被害者。症状固定時に平均余命が40年で、ご家族が介護される場合
8,000円×365日×23.115=6,749万5,800円
ただし、日額については現実的な介護状況に鑑み算定されることも多く、ここを見誤ると金額差が極めて大きくなります。適切な将来介護費を請求するために、交通事故に詳しい弁護士に示談交渉を依頼することをおすすめします。
その他の示談金
後遺障害1級と認定された場合、後遺障害慰謝料や逸失利益、将来の介護費用のほかにも受け取れる示談金は下記のとおりです。
項目 | 詳細 |
---|---|
治療関係費 | 治療費、入院費、手術費、付添看護費、リハビリ費用 |
入通院慰謝料 | 交通事故でケガをしたことによる精神的苦痛に対する補償 |
休業損害 | 交通事故で仕事ができなくなったことにより減額した収入に対する補償 |
近親者慰謝料 | 家族が重傷を負ったことによる精神的苦痛に対する慰謝料 |
後見等関係費用 | 成年後見人の申立てなどにかかる費用 |
付添看護費 | 医師の指示などにより、付添いが必要になったときの付添人の休業損害等 |
交通事故の被害者の方に介護が必要になった場合、ご本人はもちろん、ご家族の方の精神的苦痛や負担の程度はとても大きいはずです。
しかし、加害者側の保険会社は低い金額を提示してくることも多いため、交通事故に詳しい弁護士に相談するのが得策です。
後遺障害1級で受けられる給付金・公的支援
後遺障害1級に認定された方は、加害者側の保険会社から受け取る示談金に加えて、各種の給付金を受け取ったり、公的支援を受けたりすることが可能です。
身体障害等級による給付・支援
後遺障害1級に認定された方が身体障害手帳を申請して交付された場合、さまざまな給付や支援などを受けられます。下記に主なものをご紹介します。
- 障害年金の受取り
- 所得税・住民税などの税金に関する優遇措置(障害者控除)
- 福祉医療費給付金
- 補装用具(車いす・下肢装具・補聴器など)購入費用への助成
- NHK受信料の減免
- 電車・バス・タクシー・航空運賃などの公共交通機関の割引
など
労災保険による補償
後遺障害1級に認定された方は、労働者災害補償保険(労災保険)を利用することにより、下記の給付金を受け取ることができます。
項目 | 支給形式 | 支給期間・支給額 |
---|---|---|
障害補償年金(就業中) 障害年金(通勤途中) | 年金 | 1年間につき、給付基礎日額の313日分 |
障害特別年金 | 年金 | 1年間につき、算定基礎日額の313日分 |
障害特別支給金 | 一時金 | 342万円 |
- ※給付基礎日額:事故前3ヵ月間の賃金総額を暦日数で割った1日当たりの賃金額。
- ※算定基礎日額:事故前1年間に支払われた特別給与(ボーナスなどの3ヵ月を超える期間ごとに支払われる賃金)の総額(算定基礎年額)を365日で割った額。
後遺障害等級認定の流れ
後遺障害等級認定の申請方法には、「被害者請求」と「事前認定」の2つがありますが、適切な認定結果を受け取りたい場合には、「被害者請求」がおすすめです。
ここでは、「被害者請求」で後遺障害の等級認定を受けるまでの流れをご案内します。
- 交通事故被害者が自賠責保険会社に「後遺障害診断書」などの資料を提出
- 自賠責保険会社が損害保険料率算出機構に調査を依頼
- 損害保険料率算出機構が自賠責保険会社に調査結果を報告
- 自賠責保険会社が支払額を決定し、交通事故被害者に通知
主治医に「症状固定(これ以上治療を続けても症状の回復・改善が期待できなくなった状態)」と判断されたら、「後遺障害診断書」の作成を依頼しましょう。
後遺障害等級の申請から認定までには約1ヵ月〜3ヵ月ほどかかります。
適切な後遺障害等級認定を得るためのポイント
適切な後遺障害等級を認定されるためには、守るべきポイントがあります。
①医師の指示を守って通院し、症状固定までしっかり治療を受ける
後遺障害の等級認定では、症状固定時の状態のみが判断材料ではありません。交通事故の直後の診断や症状、その後の治療経過などの資料も重要な判断材料です。治療中から主治医に自分の症状をしっかりと伝えて、必要な検査を行いましょう。
②主治医に適切な内容の後遺障害診断書を作成してもらう
これまでご説明したとおり、後遺障害診断書は後遺障害の認定結果に大きくかかわる重要な書類です。後遺障害等級の認定基準に詳しい弁護士などにチェックを依頼し、必要であれば医師に追加の検査や記載内容の補足などを求めましょう。
③後遺障害に精通した弁護士に相談する
後遺障害等級認定はケガの部位ごとに認定要件が違います。これに伴ってチェック事項も異なってくることから、必要十分な内容の各種書類が用意できているか被害者の方が確認し、判断することは難しいでしょう。ぜひ、後遺障害等級認定に精通した弁護士などに確認してもらいましょう。
まとめ
後遺障害1級は、交通事故の後遺障害のなかでもっとも程度が重いものが認定されます。そのなかには、日常生活において常に介護が必要なものも含まれます。
後遺障害1級を認定されるケガを負うことは、被害者の生活に大きな影響をおよぼすだけでなく、ご家族にも大きな負担がかかります。ですから、高額な後遺障害慰謝料や逸失利益に加え、将来の介護費用なども請求することができます。
しかし、後遺障害1級の認定基準慰謝料の相場などをきちんと理解しておかなかった場合、相場よりも低い金額で示談してしまうおそれがあります。
被害者本人だけでなく、ご家族の今後の生活を支えるためにも、適切な賠償金を受け取ることは非常に重要です。
ぜひ交通事故に詳しい弁護士に交渉を依頼し、適切な賠償金を受け取っていただければと思います。
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弁護士費用特約が付いていない場合の弁護士費用
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実際のケースでは、弁護士費用は、この上限内に収まることが多いため、相談者の方・依頼者の方は実質無料で弁護士に相談・依頼できることが多いです。
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