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当て逃げされた!物損事故でも慰謝料はもらえる?とるべき対応を解説

[ 公開日:2024/07/30 ] [ 更新日:2024/09/09 ]

当て逃げとは、物損事故を起こしてしまったにもかかわらず、警察への報告や必要な措置を行わずに去ってしまう行為のことをいいます。

事故現場に居合わせていればよいですが、当て逃げの場合、加害者がすでに逃げてしまっていることもあります。
そのため、被害者の方がご自身で適切な対応をしなければなりません。

そこでこのコラムでは、当て逃げの意味やよくあるケース、加害者の責任などに加え、当て逃げされたときにとるべき対応を解説します。
また、加害者が見つかったときに損害賠償として請求できる費用や、加害者が見つからなかったときの対処法も紹介していますので、ぜひ最後までご覧ください。

この記事でわかること
  • 当て逃げの意味とよくあるケース
  • 当て逃げされたときの対応
  • 当て逃げ犯が見つかったあとの損害賠償請求
目次

当て逃げとは?ひき逃げとの違いとよくあるケース

当て逃げとは、物損事故を起こしたにもかかわらず、加害者が以下の義務(道路交通法第72条 )を果たさずに走り去る行為のことです。

  • すぐに車の運転をやめる
  • 負傷者の救護や道路上の危険防止など必要な措置をする
  • 警察官に報告する

たとえば、運転中の車をほかの車やガードレール、建物などにぶつけてしまった人が車を止めずにそのまま走り去った場合は、当て逃げとなります。

当て逃げとひき逃げの違い

「当て逃げ」は物損事故の際に使用される言葉です。
事故によって人がケガをした場合(人身事故)において、加害者が道路交通法第72条で定められている義務を果たさなかった場合には、「ひき逃げ」となります。

当て逃げのよくあるケース

当て逃げはさまざまな場所で起こりますが、たとえば以下のようなケースが典型的です。

  • 駐車場内で隣の車にドアをぶつけられるケース
  • 走行中、すれ違いざまにサイドミラーなどが接触するケース
  • 知らない間に車に傷がついていたケース

特に、事故による傷が目立たないケースでは、加害者が「ちょっとぶつけただけだから問題ないだろう」と考えて逃げてしまうこともあります。

当て逃げの加害者に問われる責任

当て逃げをした加害者は、刑事責任・行政責任・民事責任を問われる可能性があります。
それぞれ、具体的にどのような罰則や処分があるのか以下で詳しく見ていきましょう。

刑事責任

当て逃げは、道路交通法で定められた以下の義務に違反する行為です。

  • 危険防止措置義務
  • 報告義務

そのため、起訴されれば以下のような刑事上の責任を負うことになります。

違反の内容罰則
危険防止措置義務違反1年以下の懲役または10万円以下の罰金
報告義務違反3ヵ月以下の懲役または5万円以下の罰金

なお、具体的な罰則は刑事裁判で決まります。

行政責任

当て逃げでは、以下の義務に違反したとして行政上の責任が問われ、運転免許上の処分を受けます。

  • 危険防止等措置義務
  • 安全運転義務

違反点数はそれぞれ以下のとおりです。

違反の内容違反点数
危険防止措置義務違反5点
安全運転義務違反2点

このように合計7点が加算されるため、これまでに一度も交通違反による点数の累積がなかったとしても、30日間の免許停止処分を受けることになります。

民事責任

交通事故を起こした際の民事上の責任として、被害者の相手の車などに与えた損壊に対する損害賠償金の支払義務が生じます。

損害賠償の金額は、示談交渉などによって決まります。

当て逃げされたときの対応

当て逃げされたときは、大まかに以下の流れで適切に対応する必要があります。

  1.  警察に事故があったことを届け出る
  2. ドライブレコーダーや目撃情報を確認する
  3. 加害者が見つかったら示談交渉を行う

以下で詳しく見ていきましょう。

①警察に事故があったことを届け出る

当て逃げされたことに気付いたら、まずは警察に連絡しましょう。

事故があったことを警察へ届け出ることで、交通事故証明書を取得できます。
交通事故証明書は、加害者へ損害賠償を請求するときだけでなく、ご自身の保険を利用するときにも必要です。
そのため、「いつ当て逃げされたのかわからない」という場合も必ず届け出ておきましょう。

なお、当て逃げ(物損事故)として届け出たあとでケガをしていたことがわかった場合、ひき逃げ(人身事故)として扱ってもらうための変更手続が必要です。
物損事故から人身事故への変更手続について詳しくは、以下のページをご確認ください。

②ドライブレコーダーや目撃情報を確認する

ご自身の車にドライブレコーダーを付けている場合は、録画を確認しましょう。
当て逃げした車の種類や色、ナンバーなどがわかれば、加害者が見つかる可能性が高いです。

ドライブレコーダーがない場合にも、目撃者の証言や防犯カメラの映像などから加害者を特定できる場合もあります。
加害者が見つかったときにきちんと賠償をしてもらうためにも、できるだけ情報を集め、事故の状況を把握しておきましょう。

③加害者が見つかったら示談交渉を行う

当て逃げの加害者が見つかったら、過失割合や損害額を決め、賠償金を請求するための示談交渉を行います。

交渉の際は、適切な過失割合や金額で和解できるよう、以下のような客観的な証拠をもとに話し合うことが大切です。

  • 事故前後の車の写真や映像
  • 事故状況がわかるドライブレコーダーや防犯カメラの映像 など

なお、加害者が保険に加入している場合には、加害者の保険会社と交渉をすることになります。ただし、保険会社が提示する金額が必ずしも適正であるとは限りません。

そのため、安易に合意せず、交通事故に詳しい弁護士に相談してみることをおすすめします。

当て逃げの加害者に請求できる損害賠償の内訳

当て逃げの加害者に請求できるのは、主に以下の費用です。

  • 車の修理費用
  • 代車費用
  • 評価損
  • 休車損
  • その他(レッカー費用、積載物の修理費用、廃車費用など)

それぞれの費用について、以下で詳しく解説します。

車の修理費用

当て逃げで車が損壊した場合の修理費用を請求できます。
請求できる金額の上限は、事故当時の車の時価額が上限です。

なお、修理費が事故当時の車の価格を超える場合や、物理的に修理が不可能な場合などは、差額分の買替費用を請求できます。

代車費用

車を修理に出した場合や買い替えた場合、修理期間または新たに購入した車の納車までの期間は、車を使用できません。
この期間に代車を使用した場合、代車を使用する必要性と費用の相当性が認められれば、代車費用を請求できます。

ただし、たとえば事故にあった車が外国製の高級車などであったケースで、同種または同等のグレードの車を代車として使用した場合、相当性が認められないおそれもあります。

評価損

車を修理に出したにもかかわらず機能・外観を修復できなかった場合、車の価値は減少してしまいます。また、事故歴そのものによっても車の価値は減少してしまうのです。

この減少した車の価値を「評価損」といい、加害者に損害賠償として請求できます。評価損として認められる金額は、修理費の20~30%程度であることが多いです。

ただし、車種・年式・グレード・走行距離などさまざまな事情が考慮されて決まるため、一概にいくらとはいえません。

休車損害

タクシー・バス・トラックなど、営業車として使用していた車が事故により損壊し営業できない期間が生じた場合、休んだ分だけ減少した営業利益を請求できます。

金額は、基本的には「(1日あたりの収入-経費)×休業日数」で計算します。

ただし、代車を使用して営業していた場合には、代車費用が認められるため、休車損害を請求することはできません

その他(レッカー費用、積載物の修理費用、廃車費用など)

その他、必要性や事故との相当な因果関係が認められれば、以下のような費用についても加害者に請求できる可能性があります。

  • レッカー費用
  • 積載物の修理費用
  • 廃車費用 など

物損事故で加害者に請求できる損害については以下のページでも詳しく解説していますので、参考にしてみてください。

当て逃げの加害者に慰謝料は請求できる?

当て逃げに対する慰謝料は、原則として認められていません。
ただし、当て逃げでペットがケガや死亡をしたり、自宅が破壊されたりしたことによって精神的な苦痛を受けた場合には、慰謝料請求が認められたケースもあります。

なお、「当て逃げとは」でも解説したように、事故によって人がケガや死亡をした場合は、ひき逃げ(人身事故)になります。
人身事故の被害に対しては、以下のような損害賠償金を請求することが可能です。

  • 慰謝料
  • 入通院になど治療関係費
  • 休業損害
  • 逸失利益 など

当て逃げの加害者が見つからない!車両保険は使える?

当て逃げの場合、加害者が見つからないケースもあり得ます。
その場合、ご自身の車両保険を使って車の修理費や代車費用などを補填することも可能です。

ただし、「エコノミー型」と呼ばれる車両保険など、プランによっては当て逃げが補償されないこともあるため、保険の契約内容を確認しておきましょう。

また、車両保険を利用すると、翌年度に等級が下がり、保険料が高くなるため注意が必要です。
翌年度の保険料と修理費などを比較したうえで、自費で修理したほうがよいケースもあります。

当て逃げの加害者が見つかったら弁護士に相談を

加害者が見つかり、示談交渉ができたとしても、あとで「やっぱり賠償金額に納得がいかない」と思う可能性もあります。

しかし、一度示談が成立してしまうと、基本的には再び賠償金を請求することはできません。
そのため、まずは交通事故に弁護士に相談してみるとよいでしょう。

弁護士であれば、知識や経験に基づいて賠償金が適正か判断することが可能です。また、被害者の方に代わって示談交渉ができるため、余計なストレスもかかりません。
示談交渉がうまくいかず裁判になった場合でも、対応してもらえるため安心です。

【まとめ】当て逃げされたら物損事故として損害賠償を請求できる

当て逃げをされたら、まずは警察に連絡し、できる限り証拠を確保しておきましょう。
加害者が見つかれば、示談交渉を行い車の修理費などを損害賠償として請求できます。

なお、当て逃げは物損事故として扱われるため、原則として加害者へ慰謝料を請求することはできません。
ただし、当て逃げされたことによってケガをした場合には、人身事故として扱われるため、慰謝料などを請求できる可能性があります。

いずれの場合も、適正な金額の損害賠償を受けるためには、法的な根拠に基づいて交渉をしなければなりません。そのため、ご自身で対応するのが不安な場合は、交通事故の被害に詳しい弁護士に相談したほうがよいでしょう。

  • 現在、アディーレでは物的損害の請求のみのご相談、交通事故の加害者の方からのご相談は承っておりません。何卒ご了承ください。
この記事の監修者
中西 博亮
弁護士 中西 博亮(なかにし ひろあき)
資格:弁護士
所属:東京弁護士会
出身大学:岡山大学法学部,岡山大学法科大学院
私は、交通事故案件に特化して取り組んでおり、これまで多数の案件を解決してきました。加害者側の保険会社は交通事故の被害者の方に対して低い慰謝料しか提示しないため、正当な補償を受けられない被害者が多いという実情があります。被害者の方に正当な補償を受け取っていただけるよう、私は日々、被害者の方のお声を聞き、被害者の方に代わって加害者側の保険会社と戦っています。