交通事故の休業補償とは?もらえる条件・金額・期間を解説
休業補償とは、通勤中などの交通事故によるケガで仕事を休んだ場合に、その間得られなかった収入の補償として、労災保険から支払ってもらえるお金のことです。
また、似た言葉に「休業損害」がありますが、請求先などいくつかの点で異なるため、混同しないようきちんと理解しておく必要があります。
そこで今回は、交通事故による休業において、休業補償をもらえる条件や金額、期間などを解説するとともに、休業損害との違いについてもご紹介します。
- この記事でわかること
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- 休業補償のもらえる条件・金額・計算方法
- 休業補償と休業損害の違い
- 休業補償はどれくらいの期間でもらえるか
- 目次
休業補償とは
業務中や通勤中にケガをしてしまい、それによって仕事を休んだ場合、労災保険から支払われる休業補償給付または休業給付のことです。休業補償給付は業務災害の場合に、休業給付は通勤災害の場合に支払われます。
休業補償給付と休業給付で受けられる補償は同じであるため、以下では休業補償給付と休業給付を合わせて「休業補償」と呼びます。
なお、労災保険を利用した場合には、休業補償に加えて、「休業特別支給金」が支払われます。これは、労災福祉の観点から給付されるものであり、療養生活の援護金です。
休業補償でいくらもらえるのか
休業補償と休業特別支給金が実際にいくらもらえるのかを、計算方法と併せて解説いたします。
休業補償の計算方法
休業補償は、[給付基礎日額の60%×対象日数]で計算します。
・給付基礎日額
交通事故などの発生前3ヵ月間の賃金総額(賞与などは含まない)を事故前3ヵ月の総日数で除した金額(事故前の給料の1日あたりの金額を計算したもの)
・対象日数
休業4日目から治療終了までの休業した日数(休業3日目までが待機期間と呼ばれ、労災保険からは支給されないため)
【休業補償の計算例】
条件①月給30万円の人
条件②2020年5月に交通事故にあう
条件③30日間休業した場合(待機期間を除く)
90万円(30万円+30万円+30万円)÷90日(29日+31日+30日)=1万円
1万円×60%×30日=18万円
休業特別支給金の計算方法
休業特別支給金は、[給付基礎日額の20%×対象日数]で計算します。
・給付基礎日額
交通事故などの発生前3ヵ月間の賃金総額(賞与などは含まない)を事故前3ヵ月の総日数で除した金額(事故前の給料の1日あたりの金額を計算したもの)
・対象日数
休業4日目から治療終了までの休業した日数(休業3日目までが待機期間と呼ばれ、労災保険からは支給されないため)
【休業特別支給金の計算例】
条件①月給30万円の人
条件②2020年5月に交通事故にあう
条件③30日間休業した場合(待機期間を除く)
1万円×20%×30日=6万円
休業補償はいつまでもらえるのか
原則として傷病が治癒する、もしくは症状固定になるまでもらえる
休業補償は、原則として傷病が治癒(完治)する、もしくは医師から症状固定と診断されるまではもらうことができます。
傷病が治癒するor症状固定になる までの間、「療養のために働くことができず賃金を受けていない」という条件を満たしていれば、途中で打ち切られることはありません。
なお、療養の開始から1年6ヵ月以上を経過したものの、いまだに傷病が治癒or症状固定となっておらず、かつ、特定の内容のケガである場合には、傷病補償年金に切り替わり支給されます。休業補償と傷病補償年金を同時に受給することはできません。
なお、労働基準監督署の労災保険に関するパンフレットによれば、給付決定までの期間は請求書を受理してからおおむね1ヵ月とのことです。ただし、場合によっては1ヵ月以上必要になることもあるようです。
休業補償の3つの受給条件
休業補償を受けるには、決められた3つの受給条件を満たす必要があります。
業務または通勤による負傷や疾病の療養中であること
1つ目のポイントは、業務中または通勤中の事故などであることです。
業務中である場合には休業補償給付、通勤中であれば休業給付が支払われます。
基本的に、休業補償給付と休業給付の補償内容は同じです。ただし、下記のような違いがあります。
<補償内容の違い>
休業補償給付(業務中の事故が原因) | 休業給付(通勤中の事故が原因) | |
---|---|---|
療養給付の一部負担金 | なし | あり(200円) |
待機期間の使用者の賃金支払い義務 | あり(賃金の6割) | なし |
賃金を受け取っていないこと
休業によって賃金が発生しないことも大事なポイントです。
たとえば、有給休暇のように賃金が発生する休業や、年俸制などの休んでも給与が減額されない雇用形態である場合には、休業補償は支払われません。
労働できる状態にないこと
単にケガで治療が必要という状況では足りず、ケガなどにより労働することができない状態にあることもポイントの1つです。この点については、医師から就労制限を受けているか否かなどが重要となってきます。
休業補償の申請方法
休業補償 | 休業損害 | |
---|---|---|
対象となる事故 | 勤務中・通勤中の事故 | 人身事故全般 |
請求先 | 労災保険 | 自賠責保険 任意自動車保険 |
有給休暇 | 補償の対象外 | 補償の対象 |
過失相殺 | なし | あり |
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休業(補償)給付でいくらもらえるか
休業補償は、労働基準監督署に休業補償給付支給請求書または休業給付支給請求書を提出することにより申請します。
厚生労働省は、この申請に基づいて休業補償を支給すべきかを調査し、おおむね1ヵ月程度で支給するかを判断します。支給すると判断された場合、請求書で指定した口座に休業補償が振り込まれます。
なお、請求書の様式は厚生労働省の下記ページからダウンロードできます。
休業補償の請求が認められなかったときの対処法
休業補償の請求したものの認められなかった場合には、その決定を確認した日の翌日から3ヵ月以内に「審査請求」をすれば不服申立てが可能です。
【審査請求の具体的な流れ】
- 労働局の労働者災害補償保険審査官に審査請求をする
- 請求人への聞き取りや記録の確認が行われる
- 労働基準監督署の決定の全部あるいは一部の取消し、もしくは審査請求の棄却の判断結果が通知される
ただし、審査請求で労働基準監督署の決定が覆されることは少ないです。審査請求をしたい場合には、休業補償の対象外となった経緯や労働災害の認定基準などを確認のうえ、綿密に準備を行いましょう。
なお、審査請求した結果に対しても不服がある場合は、労働保険審査会への「再審査請求」や国に対する「取消訴訟」をすることも可能です。
しかし、どちらも時間と労力がかかるのに加えて、必ずしも望みどおりの結果が得られるとは限りません。慎重に検討されることをおすすめします。
休業補償と休業損害の違い
休業補償と似たものに「休業損害」があります。
休業補償と休業損害との主な違いを表にまとめていますので、ぜひご確認ください。
<休業補償と休業損害の違い>
休業補償 | 休業損害 | |
---|---|---|
請求先 | 労災保険 | 交通事故の加害者 (自賠責保険/任意自動車保険) |
対象となる交通事故 | 勤務中・通勤中の交通事故 | すべての人身事故 |
1日あたりの支給額 | 平均賃金の80% | 原則6,100円 上限1万9,000円 (自賠責保険基準の場合) |
有給休暇を使用した場合 | もらえない | もらえる |
過失相殺 | なし | あり |
給付の上限額 | なし | 120万円(※) |
対象者 | 会社員 アルバイト パートなどの被雇用者 | 会社員 アルバイト パートなどの被雇用者 自営業者 専業主婦(主夫) 一部の無職者 など |
補償の開始日 | 休業4日目から | 休業初日から |
- ※自賠責保険の支払い分についてのみ上限あり。ケガの治療費や入通院慰謝料などを含む
休業補償と休業損害の併用はできる?
休業補償と休業損害の違いについての説明を読まれた方のなかに、「休業補償と休業損害は併用はできないの?」と疑問に思う方もいらっしゃるかもしれません。
結論から言うと 、休業補償と休業損害は損益相殺の対象となるため、二重取り、つまり休業補償として受領した金額を再度、休業損害として受領することはできません。 すでに受領している金額については控除する必要があるので、この点に注意が必要です。
休業特別支給金は相殺されずに受け取れる
休業特別支給金は損益相殺の対象ではないため、交通事故の賠償金から差し引かれることはありません。そのため、特別支給金を請求すれば、その分最終的に受け取れる金額が多くなります。
なお、休業補償を請求せず特別支給金だけを請求することも可能です。
交通事故で休業した場合は弁護士に相談するのがおすすめ!その理由は?
休業補償について理解はしたものの、実際に請求するとなると戸惑ってしまう方もいらっしゃるのではないでしょうか。そのようなときは弁護士に相談することをおすすめします。
また、弁護士に依頼すると以下のようなメリットがあります。
請求手続に関するアドバイスなどを受けられる
交通事故被害者の方は、ケガを治療しながら請求手続を進めなければなりません。労災保険を使用したから金額が増えるとは限らず、勤務先との関係や手間などを考えると労災を使用すべきか否かの判断に悩む方も多いのではと思います。
しかし、交通事故の被害に詳しい弁護士に相談すれば、労災を使うべきかについて個々の事情に応じて判断してもらえますし、適切なアドバイスを受けることもできます。
また、弁護士に依頼をすれば、万が一金額などで揉めてしまった場合も法に則ったサポートを受けられるため、安心して請求手続を進められるでしょう。
慰謝料の増額交渉を任せることができる
被害者の方ご自身で保険会社と示談交渉を行ったとしても、慰謝料などの増額を認めてもらうことは難しいでしょう。
交通事故被害に詳しい弁護士にお任せいただければ、裁判をしたならば認められる弁護士基準(裁判所基準)を用いて主張し、増額交渉を行います。そうすることで、賠償金の大幅な増額を目指すことができます。
さらに弁護士費用特約があれば費用を気にせず依頼できる
ご自身が加入されている自動車保険などに弁護士費用特約が付いている方は、発生する弁護士費用を保険会社が負担してくれるため、費用を気にせずにご依頼いただけます。
ご自身が加入している保険をぜひ確認してみてください。
弁護士費用特約が付いていない方でも、アディーレ法律事務所なら、独自の「損はさせない保証」により、保険会社提示額からの増加額より弁護士費用が高い場合は不足分の弁護士費用はいただきません。(※)
また、アディーレの交通事故被害に関する弁護士費用は、獲得した賠償金からお支払いいただく「成功報酬制」です。(※)お手元からのお支払いはないため、弁護士費用特約が付いていない方でも安心してご依頼いただけます。
- ※委任契約の中途に自己都合にてご依頼を取りやめる場合、成果がない場合にも解除までの費用として、事案の進行状況に応じた弁護士費用等をお支払いただきます。
まとめ
通勤中や業務中の交通事故でケガをした場合には、休業補償や休業損害が請求できます。
ただし、休業補償は休業損害と違い、途中で打ち切られることはないものの、やはり受け取るための条件や手続は複雑です。被害者の方ご自身で手続を進めるのは負担が大きいでしょう。
弁護士にご依頼いただければ、交通事故による損害の内容を判断したうえで、賠償金の計算や示談交渉、後遺障害の認定手続、慰謝料の増額交渉までトータルサポートいたします。
交通事故の休業補償や休業損害の請求についてお悩みの方は、ぜひ一度アディーレ法律事務所にご相談ください。