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高速道路では過失割合が違う?一般道路と違う交通事故の過失割合の考え方

[ 公開日:2022/05/20 ] [ 更新日:2024/09/09 ]
高速道路で渋滞

高速道路は、人や自転車は通ることができず信号もありません。その名前のとおり車両が高速に走行することを目的に作られています。
このような目的の違いから、高速道路は一般道路とは異なる過失割合が設定されています。

本コラムでは、高速道路での過失割合について、事故状況ごとに具体的に解説していきたいと思います。

この記事でわかること
  • 交通事故における過失割合の考え方
  • よくある高速道路上の事故における過失割合
目次

一般道路と高速道路の目的の違い

一般道路は人や車両が通行するため、人と車両、車両同士が接触しないようにすることを目的に整備されています。横断歩道や信号機が設置されているのもそのためです。これに対して高速道路は、高速での走行を前提とした環境を作ることを主な目的としています。
したがって高速道路では、最低速度を維持する義務があることや、一方通行であるため横断・転回・バックの禁止、本線車道を通行している車の優先、駐停車は原則禁止となっていることが、一般道路との大きな違いとなります。

過失割合とは?

過失割合とは、交通事故における当事者双方の責任の割合のことで、「3対7」や「10対0」といった数値で表現します。過去の裁判例を参照しながら当事者双方の話合いによって決めることが一般的ですが、話合いで決まらない場合は訴訟により決定します。

通常、過失割合は加害者もしくは加害者側の保険会社から提示されますが、提示内容に納得できない場合はその旨をきちんと主張することが大切です。なぜなら、被害者側にも過失がある場合には、その割合に応じて被害者の方が受け取れるはずの賠償金額から減額されてしまう(過失相殺)からです。
たとえば、10(被害者):90(加害者)となった場合、賠償金額の10%が減額されてしまいます。

被害者の過失の割合が高いほど、過失相殺される金額が大きくなるため、受け取れる賠償金が減額されてしまいます。加害者側の保険会社が提示する過失割合について、安易に同意しないよう注意しましょう。

事故態様別の基本的な過失割合

一般道路と高速道路では、過失割合が異なるケースは多々ありますので、一つ一つ見ていくことにします。

  • 『別冊判例タイムズ38 民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準全訂5版 東京地裁民事交通訴訟研究会編』を参考に作成しています。

合流地点における事故

基本 (A) 30 :(B) 70
修正要素 (B)進入路手前進入 (A)に-10
(B)その他の著しい過失・重過失 (A)に-10~20
(A)速度違反 (A)に+10~20
(A)急加速 (A)に+10~20
(A)その他の著しい過失・重過失 (A)に+10~20

 

高速道路に合流しようとしている車は、本線車道を通行する車の進行を妨害してはならないとされているため、基本的に合流をしようとしている車の過失が大きくなります。
修正要素としましては、合流車が進入路の手前で進入している場合や、本線車が急発進や速度違反をしているような場合は、それぞれ過失が10~20程度上乗せされます。

走行車線から追越車線へ進路変更する場合の事故

基本 (A) 20 : (B) 80
修正要素 (B)合図なし又は合図遅れ (A)に-10
(A)初心者マーク等 (A)に-10
進路変更禁止区間 (A)に-10
(B)その他の著しい過失・重過失 (A)に-10
(A)速度違反 (A)に+10~20
分岐点・出入口付近 (A)に+10
(A)ゼブラゾーン走行 (A)に+20
(A)その他の著しい過失・重過失 (A)に+10~20

一般的に、追越車線を走行する車の速度が高速であることから、追越車線へ進路変更する車はより一層の注意をすべきであるため、基本的に追越車線へ進路変更する車の過失が大きくなります。
修正要素としては、進路変更する車の合図が遅かったり、追越車線を走行する車がスピード違反をしていたりしたような場合には、それぞれ過失が10程度上乗せされます。

この点、一般道路では後続直進車30:進路変更車70となるのが基本となりますので、高速道路における追越車線への進路変更については、より高い注意義務が課されているということになります。

片側3車線以上ある高速道路で進路変更する場合の事故

基本 (A) 30 : (B) 70
修正要素(B)合図なし又は合図遅れ(A)に-10
(A)初心者マーク等 (A)に-10
進路変更禁止区間 (A)に-10
(B)その他の著しい過失・重過失 (A)に-10~20
(A)速度違反 (A)に+10~20
分岐点・出入口付近 (A)に+10
(A)ゼブラゾーン走行 (A)に+20
(A)その他の著しい過失・重過失 (A)に+20
(A)その他の著しい過失・重過失 (A)に+10~20

「走行車線から追越車線へ進路変更する場合の事故」を除く進路変更の場合です。一般道路と同じく進路変更する自動車の過失が大きくなります。
修正要素としましては、「走行車線から追越車線へ進路変更する場合の事故」の記載に同じです。

追突事故

一般道路と違い、高速道路では最低速度を維持する義務があります。また駐停車は原則として禁止されるため、やむを得ない事情がない限り先行自動車の運転手も過失を負うことになります。
先行自動車がどのような状態で追突されたかによって過失割合が異なりますので、それぞれ見ていきましょう。

過失によって駐停車した自動車への追突事故

基本 (A) 60 : (B) 40
修正要素視認不良(A)に-10
追越車線 (A)に-10
(B)の車道閉塞大 (A)に-10
(B)その他の著しい過失・重過失 (A)に-10~20
(A)速度違反 (A)に+10~20
(B)が退避不能かつ停止表示機材設置等 (A)に+10
(A)ゼブラゾーン走行 (A)に+20
(A)その他の著しい過失・重過失 (A)に+10~20

先行自動車が何らかの落ち度を認めるべき事情、たとえば、ガス欠、エンジントラブル等により運転に支障をきたして駐停車し、これに前方不注視の後行自動車が追突した場合です。このような場合においては、一般道路よりも事故発生の危険が高くなることから、先行自動車の過失が大きくなっています。

過失なく駐停車したものの、その後の対応に過失がある自動車への追突事故

基本 (A) 80 : (B) 20
修正要素 視認不良 (A)に-10
追越車線 (A)に-10
(B)の車道閉塞大 (A)に-10
(B)その他の著しい過失・重過失 (A)に-10~20
(A)速度違反 (A)に+10~20
(A)その他の著しい過失・重過失 (A)に+10~20

先行自動車が、過失のない先行事故によって本線車道等に駐停車したあと、ハザードランプを点灯しながら走行車線以外の場所へ退避しなかった場合や、発炎筒や停止表示器材を設置することが可能だったにもかかわらず、それをしなかった場合です。
駐停車することに過失がない分、追突されたことによる過失は少なくなります。

過失なく駐停車し、その後の対応にも落ち度がない自動車への追突事故

基本 (A) 100 : (B) 0
修正要素 視認不良
追越車線
(B)の車道閉塞大
(B)その他の著しい過失・重過失
(A)速度違反
(A)その他の著しい過失・重過失

駐停車することに過失がなく、さらに退避することも停止表示器材を設置することも不可能であったような、まさしくどうしようもない場合です。このような場合には先行自動車に過失を問うことはできないため、過失は0となります。
高速道路においては、このような場合でないと過失が0になりません。これは一般道路との大きな違いになっています。

路肩等(路肩または路側帯)に駐停車している自動車への追突事故

基本 (A) 100 : (B) 0
修正要素 視認不良 (A)に-10~20
(B)はみ出して駐停車 (A)に-20
(B)その他の著しい過失・重過失 (A)に-10~20
(A)速度違反 (A)に+10~20
(B)停止表示機材設置等 (A)に+10
(A)その他の重過失 (A)に+10

先行自動車が故障などのやむを得ない理由で、路肩等に駐停車しているところに、後行自動車が追突した場合です。路肩等は、原則として車両の通行が禁止されている部分であることから、後行自動車の一方的な過失となります。
修正要素としまして、先行自動車が故障などもないのに駐停車していた場合は、先行自動車に過失が10程度上乗せされます。

理由のない急ブレーキをかけたことで発生した追突事故

基本 (A) 50 : (B) 50
修正要素 (B)制動灯故障 (A)に-20
追越車線 (A)に-10
(B)その他の著しい過失・重過失 (A)に-10~20
分岐点・出入口付近 (A)に+10
(A)速度違反 (A)に+10~20
(A)その他の著しい過失・重過失 (A)に+10~20

高速道路では、原則駐停車をしてはいけないため、危険防止の必要もないのに急ブレーキをかけた場合の危険は、一般道路の場合とは比べものになりません。したがって、一般道路の場合より、追突車過失割合が極めて大きくなります。

近年話題になっているあおり運転について、被害にあった車両は、基本的に過失はつきません。しかしながら、後続車からあおり運転をされたからといって、こちらが急ブレーキを踏んで事故が起きてしまうと、このように大きく過失がついてしまいます。
あおり運転をされた場合は、焦らず車線変更して先に行かせたり、サービスエリアやパーキングエリアの施設を利用したりしましょう。

落下物によって発生する事故

基本 (A) 40 : (B) 60
修正要素 視認不良 (A)に-10
追越車線 (A)に-10
(A)が自動二輪車 (A)に-10
(B)の著しい過失・重過失 (A)に-10~20
(A)速度違反 (A)に+10~20
(A)その他の著しい過失・重過失 (A)に+10~20

先行車の車両より落下した物(落下物)により、後続車が事故を起こした場合です。落下物を避けて事故が起きた場合もこれにあたります。
比較的近い距離で落下した場合を想定していますので、落下物が発見しにくい物であれば後続車の過失は小さくなり、逆に遠方から発見しやすい物であれば10~20程度の過失が上乗せされます。

まとめ

高速道路における事故は、高速で走行する車同士の接触によるため、被害が大きく、賠償金も高額になります。
その受け取る賠償金の額に大きく影響するのが、過失です。
上述のように高速道路の事故は被害を受けた車にも過失がつくことが多く、複雑な事情が組み合わさって事故が起きるので、過失は充分に吟味して検討する必要があります。

したがって、高速道路において事故が起きてしまった場合は、保険会社から言われた過失をそのまま鵜呑みにせず、必ず交通事故に詳しい弁護士に一度は相談してから示談するようにしましょう。

この記事の監修者
御堂地 雅人
弁護士 御堂地 雅人(みどうち まさと)
資格:弁護士,東京都ヘブンアーティスト
所属:東京弁護士会
出身大学:早稲田大学教育学部
「事故により休業を余儀なくされて困っている」、「加害者側の態度に傷ついた」、「重い後遺症に苦しんでいる」など、交通事故の被害者の方が抱えるお悩み・苦悩はさまざまです。私は、このような被害者の方の立場に自分の身を置き換えたうえで、どのような苦悩があり、弁護士に何を求めたいかを想像しつつ、日々事件解決に尽力しております。本コラムが読者の皆さまの交通事故事件解決に役立つものとなれば幸いです。