その金額は適正?高次脳機能障害の賠償金は弁護士への相談がオススメ
交通事故で脳に損傷を負ってしまい、「高次脳機能障害」による後遺障害の等級認定を受けた場合、症状の程度によっては、慰謝料や逸失利益のほかに将来の介護費用等を請求することができます。
重度な高次脳機能障害となると、加害者に請求できる損害額は、数千万円~1億円以上という非常に高額になるケースもあります。重度な高次脳機能障害の場合、ご本人はもちろん、その周囲やご家族の方にも大きな影響をおよぼしかねないため、将来に備えた正しい賠償金を獲得することは非常に大切であるといえます。
そこで今回は、交通事故で高次脳機能障害が残ってしまった場合の請求できる賠償金について解説します。
- この記事でわかること
-
- 高次脳機能障害で請求できる賠償金の種類
- 高次脳機能障害における賠償金の支払い基準
- 目次
高次脳機能障害で請求できる賠償金
高次脳機能障害が残ったときに請求できるお金として、治療費のほかに、慰謝料や休業損害、逸失利益などがあります。
慰謝料は、ケガや後遺障害が残ったことに対する精神的な損害などを補てんするものです。主に、入通院慰謝料(傷害慰謝料)と後遺症慰謝料の2つがあります。
休業損害と逸失利益は、収入の減少を補てんするものです。休業損害は、治療中に仕事を休んだことによる減収を、逸失利益は、症状固定後の収入の減少などを算定していきます。逸失利益は、将来の減収を請求するものなので、一律の計算式に従って請求するのが一般的です。
では、それぞれの金額について詳しく見ていきましょう。
入通院慰謝料
入通院慰謝料(傷害慰謝料)は、事故によってケガを負ってしまったことに対する慰謝料です。ケガの治療で入院や通院をした期間をもとに計算されるため、入通院慰謝料と呼ばれます。
慰謝料を算定する基準は、自賠責保険基準、任意保険基準、弁護士基準(裁判所基準)の3つがあります。弁護士に依頼することで、3つの基準のうち一番高額となる「弁護士基準」で算出した慰謝料を請求することができます。
特に、高次脳機能障害が残った場合には、脳に損傷があることになります。弁護士基準のなかの「別表Ⅰ」と呼ばれる基準を使って算定することで、自賠責保険基準よりもかなり高額な金額を受け取れるケースが多いです。
また、脳への損傷の程度などによっては、別表Ⅰ基準をさらに増額して請求できる場合もあります。
後遺症慰謝料
後遺症慰謝料は、交通事故でケガを負ったあと、十分な治療をしたにもかかわらず、後遺症が残ってしまった場合に、その後遺障害の程度に応じて請求できる慰謝料です。
入通院慰謝料と同じように、自賠責保険基準、任意保険基準、弁護士基準の3つがあり、通常、弁護士基準がもっとも高額になります。
【関連リンク】
後遺障害に対する賠償金(慰謝料)の相場と3つの支払基準
では、今回の高次脳機能障害における後遺障害について、自賠責保険基準と弁護士基準ではそれぞれ慰謝料がどのような金額になっているかをご紹介いたします。なお、任意保険基準は、各保険会社がそれぞれ独自で定めており、一般に公表されていないため、その金額は明らかではありません。
しかし、おおむね自賠責保険基準に少し上乗せした金額であることが多いです。
後遺障害等級 | 自賠責保険基準 | 弁護士基準 |
---|---|---|
第1級 | 1,150万円 (1,100万円) | 2,800万円 |
第2級 | 998万円(958万円) | 2,370万円 |
第3級 | 861万円(829万円) | 1,990万円 |
第5級 | 618万円(599万円) | 1,400万円 |
第7級 | 419万円 (409万円) | 1,000万円 |
第9級 | 249万円 (245万円) | 690万円 |
- ※()内は2020年3月31日以前に発生した事故の場合
逸失利益
逸失利益は、「収入額×労働能力喪失率×就労可能年数に対応するライプニッツ係数」によって算定します。
労働能力喪失率は、後遺障害によって、どれくらい労働能力が失われたかの割合で、等級ごとに基本となる割合が決められています。
今回取り上げている高次脳機能障害について、後遺障害等級の基本となる割合については下記のとおりです。
後遺障害等級 | 労働能力喪失率 |
---|---|
第1~3級 | 100% |
第5級 | 79% |
第7級 | 56% |
第9級 | 35% |
3級以上ともなると、労働能力喪失率は100%となりますので、一切の労働能力を失った状態であるといえるでしょう。
たとえば、事故にあうまでは年収500万円だった方が、就労可能年数30年であったとすると、
500万円×100%×19.6004(30年に対応するライプニッツ係数)=9,800万2,000円
となります。これに、慰謝料や介護費用を合わせると、1億円を超える損害が発生することとなります。
介護費用
また、高次脳機能障害が残ってしまい、それによって介護が必要になった場合には、治療中の介護費用や、症状固定後の介護費用についても相手に請求できる場合があります。
特に、1級および2級については、介護が必要であるとして後遺障害が認定されていることになりますから、将来の介護費用も請求できる点を忘れないようにすることが肝要です。
社会保険サービスなどとの関係
自賠責保険による後遺障害の認定は、あくまでも交通事故の損害額を計算するための制度です。
そのため、自賠責保険から後遺障害認定を受けたとしても、それが介護保険制度の要介護や要支援の認定と連動したり、いわゆる「障がい者」として認定されたりするわけではありません。これは、高次脳機能障害、とりわけ介護を要する高次脳機能障害と認定されたような場合であっても、例外ではありません。
したがって、これらのサービスを受けるためには、行政などに対して、別途申請などを行う必要があります。
このときに注意したいのは、『第三者行為届』などの提出を怠らないことです。介護保険や労災保険などでは、保険による支給をした金額について、支給の原因(ケガや障害など)を作った人(第三者)がいる場合には、その第三者に対して、支給した金額の返還を求めること(求償)ができるという法制度になっているものがあります。
その場合、介護保険や労災保険としては、求償できる第三者がいることを保険会社が知るきっかけが必要であるため、第三者の行為によって原因が作られた場合には、そのことを報告する義務が課されています。
すべての社会保険サービスに報告の義務があるわけではありませんが、交通事故が原因で社会保険サービスなどを使用する場合には、交通事故が原因であることを申告しておいたほうが無難でしょう。
高次脳機能障害の賠償金請求は弁護士への相談がオススメ
ここまで、高次脳機能障害の賠償金についてお話ししてきましたが、いかがでしたでしょうか?
交通事故で大きなケガをしたことで、被害者はもちろん、そのご家族などの周囲の方においても、その後の生活が一変してしまったという方は少なくありません。高次脳機能障害の症状は、ご家族などの周囲に対する影響が多いだけではなく、しっかりと把握することが難しいという側面を持っていることから、事故にあわれてすぐの間は、症状の理解をすることや、専門的な知識を以て対応していくことが必要となります。
また、後遺障害等級の認定を受けたあとも、高額な慰謝料や介護の費用などで争いになりやすく、交渉内容も複雑になることが多いため、早い段階から弁護士に相談するなど、後遺障害等級の認定や示談交渉を見据えた対応をしておくと安心でしょう。
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