後遺障害11級の症状と認定基準|11級の慰謝料相場はいくら?
後遺障害11級は、両目の調節力または注視野が低下した、10本以上の歯に入れ歯やブリッジをつけた、といった場合に認定されます。
後遺障害11級に認定されるような症状は、交通事故被害者の生活に大きな影響をおよぼすため、高額な後遺障害慰謝料や逸失利益などを請求することができます。しかし、加害者側の保険会社が提示してくる示談金は、相場よりも低いことがほとんどです。
そこで、このコラムでは、後遺障害11級の認定基準や具体的な症状、慰謝料の相場について解説します。適切な示談金を受け取れるよう、きちんと理解しておきましょう。
- この記事でわかること
-
- 後遺障害11級の認定基準と具体的な症状
- 後遺障害11級に認定された方が受け取れる慰謝料の相場
- 後遺障害11級に認定されるためのポイント
- 目次
後遺障害11級の認定基準と症状
後遺障害等級11級には、下記の1~10号が定められており、いずれかの症状に当てはまる場合に後遺障害等級11級に認定されます。
後遺障害等級 | 症状 |
---|---|
11級1号 | 両眼の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害を残すもの |
11級2号 | 両眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの |
11級3号 | 1眼のまぶたに著しい欠損を残すもの |
11級4号 | 10歯以上に対し歯科補綴を加えたもの |
11級5号 | 両耳の聴力が1メートル以上の距離では小声を解することができない程度になったもの |
11級6号 | 1耳の聴力が40センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの |
11級7号 | 脊柱に変形を残すもの |
11級8号 | 1手のひとさし指、なか指又はくすり指を失ったもの |
11級9号 | 1足の第1の足指を含み2以上の足指の用を廃したもの |
11級10号 | 胸腹部臓器の機能に障害を残し、労務の遂行に相当な程度の支障があるもの |
後遺障害11級1号|両目の調節力または注視野が低下した
11級1号の症状は「両眼の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害を残すもの」です。
具体的には、両目が下記のいずれかの状態に該当する場合に認定されます。
- 瞳の調節力(ピントを合わせる力)が半分以下になった
- 注視野(頭部を固定し、眼球を動かして直視できる範囲)が半分以下になった
後遺障害11級2号|両目の瞼の開け閉めが上手くできない
11級2号の症状は「両眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの」です。
具体的には、両目が下記のいずれかの状態に該当する場合に認定されます。
- 目を開いたときに、まぶたが瞳孔領を完全に覆う
- 目を閉じたときに、角膜を完全に覆えない
顔面や側頭部などへの衝撃で、視神経や外眼筋などが損傷し、まぶたの開け閉めが上手にできなくなることがあります。
後遺障害11級3号|片目の瞼が角膜を完全に覆えない
11級3号の症状は「1眼のまぶたに著しい欠損を残すもの」です。
具体的には、片目が眼を閉じた時に角膜(黒目)を完全に覆えない場合に認定されます。
後遺障害11級4号|10本以上の歯に入れ歯やブリッジをつけた
11級4号の症状は「10歯以上に対し歯科補綴を加えたもの」です。
具体的には、10本以上の歯が欠けたり失われたりした場合に、それを補うための人工の歯を追加する治療をした場合に認定されます。
人工的に歯を補う方法としては、主に、入れ歯、ブリッジ(失われた歯の両側にある歯を支えにして、固定式の人工歯を取り付ける)、インプラントの3種類があります。
なお、治療した歯が14本以上だと10級4号、7本以上だと12級3号、5本だと13級5号、3本以上だと14級2号が認定されます。
後遺障害11級5号|両耳の聴力が小声が聞こえないレベルで聴力が低下した
11級5号の症状は「両耳の聴力が1メートル以上の距離では小声を解することができない程度になったもの」です。
具体的には、下記の状態にあてはまる場合に認定されます。
- 両耳の平均純音聴力レベル(どれくらい小さい音が聞こえるか)が40dB以上のもの
※40dB=図書館など
後遺障害11級6号|片耳の聴力が普通の会話が聞こえないレベルで聴力が低下した
11級6号の症状は「1耳の聴力が40センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの」です。
具体的には、下記のいずれかの状態にあてはまる場合に認定されます。
- 片耳の平均純音聴力レベル(どれくらい小さい音が聞こえるか)が70dB以上
- 片耳の平均純音聴力レベルが50db以上かつ最高明瞭度(聞こえた音の意味や内容が理解できる程度)が50%以下
※70dB=セミの鳴き声(至近)など
※50dB=換気扇など
後遺障害11級7号|背骨が変形した
11級7号の症状は「脊柱に変形を残すもの」です。
具体的には、下記のいずれかの状態にあてはまる場合に認定されます。
- 脊椎の圧迫骨折がX線写真で確認できる
- 脊椎の安定性を高めるために、骨を金属や骨移植で固定する手術をした(※)
- 3つ以上の背骨に対して、椎弓(背骨の後ろの部分)を切除または再構成する手術した
※移植した骨が吸収されてしまった場合は除きます
後遺障害11級8号|片方の手で人差し指・中指・薬指のどれかを失った
11級8号の症状は「1手のひとさし指、なか指又はくすり指を失ったもの」です。
具体的には、片手の人差し指・中指・薬指のどれかが以下の状態にあてはまる場合に認定されます。
- 手指を中手骨または基節骨で切断する
- 近位指節間関節において基節骨と中節骨で切り離す
後遺障害11級9号|片方の足で親指を含む2本の指が動かない
11級9号の症状は「1足の第1の足指を含み2以上の足指の用を廃したもの」です。
具体的には、片足の親指を含む2本の指で以下の状態にあてはまる場合に認定されます。
- 親指の未節骨の長さを半分以上失った
- 親指以外の指が中節骨もしくは基節骨で切り離されたか、遠位指節間関節または近位指節間関節で切り離す
- 親指の指節間関節から先の可動域が半分以下になった
- 親指以外の指の中足指節間関節か近位指節間関節の可動域が半分以下になった
後遺障害11級10号|胸腹部の臓器の機能に障害があって仕事はできるが制限がある
11級10号の症状は「胸腹部臓器の機能に障害を残し、労務の遂行に相当な程度の支障があるもの」です。
具体的には、内臓の障害により、働くことはできるが仕事の内容に制限がかかる場合に認定されます。
症状や状態として、次のようなものが挙げられます。
【呼吸器の障害】
・呼吸困難のため、健康な人と同じような階段の上り下りが困難
【循環器の障害】
・心機能の低下により、走る、階段を駆け上がるなどの激しい運動が困難
・房室弁または大動脈弁を置換し、継続的に抗凝血薬療法を行わない
・大動脈に偽腔開存型の解離がある
【消化器などの障害】
・消化吸収障害、ダンピング症候群、胃切除後の逆流性食道炎のいずれか一つに該当する
・小腸を大量に切除したもの(空腸および回腸が300cm以下となる)
・大腸のすべて(ほとんど)を切除した
・瘻孔から少量ではあるが明らかに小腸または大腸の内容が漏出する
・小腸または大腸の狭さくがある
・用手摘便を要さない便秘
・常時おむつの装着は要さない便失禁
・慢性肝炎でありウイルスの持続感染が認められ、かつAST・ALTが持続的に低値
・膵臓の外分泌機能障害または内分泌機能障害のいずれかが認められる
・腎臓を失う、または腎機能が低下した
【泌尿器の障害】
・外尿道口形成術を行ったものまたは尿道カテーテルを留置した
・膀胱の機能の障害により、残尿がある
・尿道狭さくのため、糸状ブジーが必要
・切迫性尿失禁および腹圧性尿失禁がある
・頻尿
後遺障害11級の示談金
後遺障害11級に認定された場合、後遺障害慰謝料や逸失利益などを請求することができます。
後遺障害11級の後遺障害慰謝料の相場
後遺障害慰謝料には、「自賠責保険基準」、「任意保険基準」、「弁護士基準(裁判所基準)」の3つがあり、基準によって受け取れる賠償金額が異なります。このなかで、通常もっとも高額となるのが弁護士基準です。
加害者側の保険会社は、自賠責保険基準もしくは任意保険基準による金額を提示してくることが多く、弁護士基準より低い金額になります。
後遺障害等級 | 自賠責保険基準 | 弁護士基準 |
---|---|---|
後遺障害11級 | 136万円(135万円) | 420万円 |
- ※()内は2020年3月31日以前に発生した事故の場合
後遺障害11級に認定されるようなケースでは、後遺障害慰謝料の金額は高くなることが多く、それにしたがって自賠責保険基準と弁護士基準の差額も大きくなります。
低い基準で算定されて損をしないよう、弁護士基準での算定がおすすめです。
後遺障害11級の逸失利益の計算方法
逸失利益とは、交通事故にあわなければ将来得られたはずの利益のことをいいます。
後遺障害11級と認定された場合、労働能力喪失率(後遺障害の等級に応じた労働能力の喪失率)は20%とされています。
後遺障害11級と認定された場合、逸失利益は下記の計算式で計算します。
<逸失利益の計算式>
基礎収入×労働能力喪失率20%×(労働能力喪失期間に対するライプニッツ係数)
<計算例>
Aさん(男性、35歳、会社員、年収500万円)
500万円×20%×20.39=2,039万円
その他の示談金
後遺障害11級と認定された場合、後遺障害慰謝料や逸失利益のほかにも受け取れる示談金は下記のとおりです。
項目 | 詳細 |
---|---|
治療関係費 | 治療費、入院費、手術費、付添看護費、リハビリ費用 |
入通院慰謝料 | 交通事故でケガをしたことによる精神的苦痛に対する補償 |
休業損害 | 交通事故で仕事ができなくなったことにより減額した収入に対する補償 |
ただし、加害者側の保険会社は支払いを拒否してくることも多いため、交通事故に詳しい弁護士に相談するのが得策です。
後遺障害等級認定の流れ
後遺障害等級認定の申請方法には、「被害者請求」と「事前認定」の2つがありますが、適切な認定結果を受け取りたい場合には、「被害者請求」がおすすめです。
ここでは、「被害者請求」で後遺障害の等級認定を受けるまでの流れをご案内します。
- 交通事故被害者が自賠責保険会社に「後遺障害診断書」などの資料を提出
- 自賠責保険会社が損害保険料率算出機構に調査を依頼
- 損害保険料率算出機構が自賠責保険会社に調査結果を報告
- 自賠責保険会社が支払額を決定し、交通事故被害者に通知
主治医に「症状固定(これ以上治療を続けても症状の回復・改善が期待できなくなった状態)」と判断されたら、「後遺障害診断書」の作成を依頼しましょう。後遺障害等級の申請から認定までには約1ヵ月〜3ヵ月ほどかかります。
適切な後遺障害等級認定を得るためのポイント
適切な後遺障害等級を認定されるためには、守るべきポイントがあります。
①医師の指示を守って通院し、症状固定までしっかり治療を受ける
後遺障害の等級認定では、症状固定時の状態のみが判断材料ではありません。交通事故の直後の診断や症状、その後の治療経過などの資料も重要な判断材料です。治療中から主治医に自分の症状をしっかりと伝えて、必要な検査を行いましょう。
②主治医に適切な内容の後遺障害診断書を作成してもらう
これまでご説明したとおり、後遺障害診断書は後遺障害の認定結果に大きくかかわる重要な書類です。後遺障害等級の認定基準に詳しい弁護士などにチェックを依頼し、必要であれば医師に追加の検査や記載内容の補足などを求めましょう。
③後遺障害に精通した弁護士に相談する
後遺障害等級認定はケガの部位ごとに認定要件が違います。これに伴ってチェック事項も異なってくることから、必要十分な内容の各種書類が用意できているか被害者の方が確認し、判断することは難しいでしょう。ぜひ、後遺障害等級認定に精通した弁護士などに確認してもらいましょう。
まとめ
後遺障害11級に認定される症状は程度が重いものであり、後遺障害11級を認定されるケガを負うことは、被害者の生活に大きな影響をおよぼします。ですから、高額な後遺障害慰謝料や逸失利益などを請求することができます。
しかし、後遺障害11級の認定基準慰謝料の相場などをきちんと理解しておかなかった場合、相場よりも低い金額で示談してしまうおそれがあります。
交通事故被害者の方の今後の生活を支えるために、適切な賠償金を受け取ることは非常に重要です。
ぜひ交通事故に詳しい弁護士に交渉を依頼し、適切な賠償金を受け取っていただければと思います。
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