後遺障害4級の症状と認定基準|4級の慰謝料相場はいくら?
後遺障害4級は、両眼の視力が0.06以下になった、両耳がまったく聴こえない、両手の手指が動かない、といった場合に認定されます。
後遺障害4級に認定される症状は非常に重く、交通事故被害者の生活に極めて大きな影響をおよぼすため、高額な後遺障害慰謝料や逸失利益などを請求することができます。
そこで、このコラムでは、後遺障害4級の認定基準や具体的な症状、慰謝料の相場について解説します。
- この記事でわかること
-
- 後遺障害4級の認定基準と具体的な症状
- 後遺障害4級に認定された方が受け取れる慰謝料の相場
- 後遺障害4級に認定されるためのポイント
- 目次
後遺障害4級の認定基準と症状
後遺障害等級4級には、下記の1~7号が定められており、いずれかの症状に当てはまる場合に後遺障害等級4級に認定されます。
後遺障害等級 | 症状 |
---|---|
4級1号 | 両眼の視力が0.06以下になったもの |
4級2号 | 咀嚼及び言語の機能に著しい障害を残すもの |
4級3号 | 両耳の聴力を全く失ったもの |
4級4号 | 一上肢をひじ関節以上で失ったもの |
4級5号 | 一下肢をひざ関節以上で失ったもの |
4級6号 | 両手の手指の全部の用を廃したもの |
4級7号 | 両足をリスフラン関節以上で失ったもの |
後遺障害4級1号|両目の視力が0.06以下
4級1号の症状は「両眼の視力が0.06以下になったもの」です。
なお、ここでいう視力は、裸眼ではなく、メガネやコンタクトレンズによって矯正している視力(矯正視力)のことです。両目が矯正視力でも視力が0.06以下になった場合に4級1号に認定されます。
後遺障害4級2号|咀嚼と言語の機能に著しい障害がある
4級2号の症状は「咀嚼及び言語の機能に著しい障害を残すもの」です。
具体的には、流動食しか食べられず、4種の語音のうち2種以上の発音ができなくなってしまった状態に認定されます。
4種の語音 | 子音 |
---|---|
口唇音 | ま行、ぱ行、ば行、わ行、ふ |
歯舌音 | な行、た行、だ行、ら行、さ行、しゅ、し、ざ行、じゅ |
口蓋音 | か行、が行、や行、ひ、にゅ、ぎゅ、ん |
喉頭音 | は行 |
流動食しか食べられず、4種の語音のうち3種以上の発音ができなくなってしまった場合は、後遺障害1級2号が認定されます。
後遺障害4級3号|両耳がまったく聴こえない
4級3号の症状は「両耳の聴力を全く失ったもの」です。
具体的には、下記のいずれかの状態に該当する場合に認定されます。
- 両耳の平均純音聴力レベル(どれくらい小さい音が聴こえるか)が90dB以上のもの
- 両耳の平均純音聴力レベルが80dB以上であり、かつ最高明瞭度(聴こえた音の意味や内容が理解できる程度)が30%以下のもの
※90dB=犬の鳴き声、工場の中など
※80dB=電車の車内、ピアノなど
【関連リンク】
目・耳・鼻・口の後遺障害とは
後遺障害4級4号|片腕のひじより上または根本を切断した
4級4号の症状は「1上肢をひじ関節以上で失ったもの」です。
具体的には、片方の腕が下記のいずれかの状態に該当する場合に認定されます。
- 肩関節で肩甲骨と上腕骨を切り離す
- 肩と肘の間で腕を切断する
- 肘関節で上腕骨と前腕の骨(橈骨と尺骨)を切り離す
後遺障害4級5号|片足のひざより上または根本を切断した
4級5号の症状は「1下肢をひざ関節以上で失ったもの」です。
具体的には、片方の脚が下記のいずれかの状態に該当する場合に認定されます。
- 股関節で骨盤と大腿骨を切り離す
- 股関節と膝の間で脚を切断する
- 膝関節で大腿骨と下腿の骨(脛骨と腓骨)を切り離す
後遺障害4級6号|両手の手指が動かない
4級6号の症状は「両手の手指の全部の用を廃したもの」です。
具体的には、両手のすべての指が下記の状態に該当する場合に認定されます。
- 手指の末節骨の半分以上を失う
- 親指は指節間関節、それ以外の指は中手指節関節または近位指節間関節に著しい運動障害がある
片手の場合は、7級が認定される可能性があります。
後遺障害4級7号|両脚を足の甲から足首あたりで切断した
4級7号の症状は「両脚をリスフラン関節以上で失ったもの」です。
具体的には、両脚が下記のいずれかの状態に該当する場合に認定されます。
- 足根骨において切断する
- リスフラン関節において中足骨と足根骨とを切り離す
片足の場合は、7級が認定される可能性があります。
後遺障害4級の示談金
後遺障害4級に認定された場合、後遺障害慰謝料や逸失利益などを請求することができます。
後遺障害4級の後遺障害慰謝料の相場
後遺障害慰謝料には、「自賠責保険基準」、「任意保険基準」、「弁護士基準(裁判所基準)」の3つがあり、基準によって受け取れる賠償金額が異なります。このなかで、通常もっとも高額となるのが弁護士基準です。
加害者側の保険会社は、自賠責保険基準もしくは任意保険基準による金額を提示してくることが多く、弁護士基準より低い金額になります。
後遺障害等級 | 自賠責保険基準 | 弁護士基準 |
---|---|---|
後遺障害4級 | 737万円(712万円) | 1,670万円 |
- ※()内は2020年3月31日以前に発生した事故の場合
後遺障害4級に認定されるようなケースでは、後遺障害慰謝料の金額は高くなることが多く、それにしたがって自賠責保険基準と弁護士基準の差額も大きくなります。
低い基準で算定されて損をしないよう、弁護士基準での算定がおすすめです。
後遺障害4級の逸失利益の計算方法
逸失利益とは、交通事故にあわなければ将来得られたはずの利益のことをいいます。
後遺障害4級と認定された場合、労働能力喪失率(後遺障害の等級に応じた労働能力の喪失率)は92%とされています。
後遺障害4級と認定された場合、逸失利益は下記の計算式で計算します。
<逸失利益の計算式>
基礎収入×労働能力喪失率92%×(労働能力喪失期間に対するライプニッツ係数)
<計算例>
Aさん(男性、35歳、会社員、年収500万円)
500万円×92%×20.39=9,379万4,000円
その他の示談金
後遺障害4級と認定された場合、後遺障害慰謝料や逸失利益のほかにも受け取れる示談金は下記のとおりです。
項目 | 詳細 |
---|---|
治療関係費 | 治療費、入院費、手術費、付添看護費、リハビリ費用 |
入通院慰謝料 | 交通事故でケガをしたことによる精神的苦痛に対する補償 |
休業損害 | 交通事故で仕事ができなくなったことにより減額した収入に対する補償 |
自宅改装費等※ | 被害者宅のリフォームにかかる費用など |
- ※後遺障害が認定されれば請求可能
ちなみに、将来介護費用は後遺障害1級・2級と認定された場合に請求可能ですが、下記の2点を証明できれば後遺障害4級認定でも請求することができます。
- 日常生活を送るための手助けや監視、声かけが欠かせない(身体的な手助けに加え、認知症や情緒不安定などのために監視が必要な場合も含む)
- 状態の改善が将来にわたり見込めない
ただし、加害者側の保険会社は低い金額を提示してくることも多いため、交通事故に詳しい弁護士に相談するのが得策です。
後遺障害等級認定の流れ
後遺障害等級認定の申請方法には、「被害者請求」と「事前認定」の2つがありますが、適切な認定結果を受け取りたい場合には、「被害者請求」がおすすめです。
ここでは、「被害者請求」で後遺障害の等級認定を受けるまでの流れをご案内します。
- 交通事故被害者が自賠責保険会社に「後遺障害診断書」などの資料を提出
- 自賠責保険会社が損害保険料率算出機構に調査を依頼
- 損害保険料率算出機構が自賠責保険会社に調査結果を報告
- 自賠責保険会社が支払額を決定し、交通事故被害者に通知
主治医に「症状固定(これ以上治療を続けても症状の回復・改善が期待できなくなった状態)」と判断されたら、「後遺障害診断書」の作成を依頼しましょう。後遺障害等級の申請から認定までには約1ヵ月〜3ヵ月ほどかかります。
適切な後遺障害等級認定を得るためのポイント
適切な後遺障害等級を認定されるためには、守るべきポイントがあります。
①医師の指示を守って通院し、症状固定までしっかり治療を受ける
後遺障害の等級認定では、症状固定時の状態のみが判断材料ではありません。交通事故の直後の診断や症状、その後の治療経過などの資料も重要な判断材料です。治療中から主治医に自分の症状をしっかりと伝えて、必要な検査を行いましょう。
②主治医に適切な内容の後遺障害診断書を作成してもらう
これまでご説明したとおり、後遺障害診断書は後遺障害の認定結果に大きくかかわる重要な書類です。後遺障害等級の認定基準に詳しい弁護士などにチェックを依頼し、必要であれば医師に追加の検査や記載内容の補足などを求めましょう。
③後遺障害に精通した弁護士に相談する
後遺障害等級認定はケガの部位ごとに認定要件が違います。これに伴ってチェック事項も異なってくることから、必要十分な内容の各種書類が用意できているか被害者の方が確認し、判断することは難しいでしょう。ぜひ、後遺障害等級認定に精通した弁護士などに確認してもらいましょう。
まとめ
後遺障害4級に認定される症状は非常に程度が重いものであり、後遺障害4級を認定されるケガを負うことは、被害者の生活に大きな影響をおよぼします。ですから、高額な後遺障害慰謝料や逸失利益などを請求することができます。
しかし、後遺障害4級の認定基準慰謝料の相場などをきちんと理解しておかなかった場合、相場よりも低い金額で示談してしまうおそれがあります。
交通事故被害者の方の今後の生活を支えるために、適切な賠償金を受け取ることは非常に重要です。
ぜひ交通事故に詳しい弁護士に交渉を依頼し、適切な賠償金を受け取っていただければと思います。
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