肋骨骨折で認められる後遺障害等級と慰謝料について
交通事故の際に胸部を強く打ちつけ、その衝撃で肋骨骨折を負ってしまった場合、後遺障害が残ることがあります。後遺障害にはさまざまな種類がありますが、障害の程度によって、受け取れる賠償金額が大きく異なることはご存じでしたか?
そのため、適正な後遺障害の認定を受けるとともに、相手から適正な額の賠償金を受け取ることが、将来の不安を解消するためにも重要なのです。
本コラムでは、肋骨骨折による後遺障害にスポットを当て、具体的な種類や認定された場合に発生する賠償金などについて説明します。
- この記事でわかること
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- 肋骨骨折の治療方法がわかる
- 肋骨骨折で認められる後遺障害の種類がわかる
- 肋骨骨折で請求できる慰謝料の相場がわかる
- 目次
肋骨骨折とは
肋骨骨折とは、交通事故の衝撃によって肋骨が折れてしまうことです。
肋骨骨折の原因としては、運転者であれば「エアバックやハンドルで胸を強打した」など、歩行者であれば「車体や地面に打ちつけたこと」などが挙げられます。
肋骨とは、心臓や肺などの胸部、肝臓や脾臓、腎臓の一部などを覆っている、左右12本ずつが対になった細い骨のことです。
肋骨骨折の場合、骨折した部位に痛みを感じ、特に体を動かしたときや呼吸をした際に症状が出やすいです。
また、折れた骨が心臓や肺などの重要な臓器を傷つけることで、臓器損傷を引き起こすことがあります。この場合、呼吸不全や出血性ショックを伴うことがあるため、早急な手当てが必要です。
肋骨骨折の治療方法には、「保存的治療」と「外科的治療」、大きく分けて2つの治療方法があります。ここからは、それぞれの治療方法について、簡単に見ていきましょう。
肋骨骨折の治療方法1 《保存的治療》
比較的症状が軽い場合には、保存的治療を用いることが多いといわれています。保存的治療とは手術を行わずに、ギプスなどで骨折した部位を固定し、骨が癒合するのを待つ治療法のことです。
肋骨骨折の場合は、バストバンドなどを使って患部を固定し、安静にすることで骨の癒合を図りますが、骨がずれた状態で固定すると、癒合しても変形が残ってしまう可能性があります。
肋骨骨折の治療方法2 《外科的治療》
一方で、複数箇所の骨折や臓器損傷を伴うなどの比較的症状が重い場合には、外科的治療を用いることもあります。外科的治療とは、先ほど紹介した保存的治療と異なり、手術を行う治療法のことです。たとえば、スクリューやプレートを体内に埋め込む手術を行い、骨を固定して、癒合を図るといった治療が行われます。
肋骨骨折による後遺障害
肋骨骨折の場合、無事に骨がくっついたとしても、変形が残ってしまうなどの後遺障害が発生するケースがあります。後遺障害が認定されると、獲得できる賠償金額も大きく変わるので、交通事故の示談交渉をする際には細心の注意を払う必要があるのです。
肋骨骨折による後遺障害は、主に2つに分類できます。
変形障害
後遺障害12級5号:鎖骨、胸骨、肋骨、肩甲骨または骨盤骨に著しい変形を残すもの
変形障害とは、骨が元の形に治らず、変形したまま癒合した障害のことです。変形障害が生じた場合には、後遺障害12級が認定される可能性があります。
この変形とは、単にレントゲン上で変形がわかる程度ではなく、裸体になったときに明らかに変形がわかる程度でなければなりません。
神経症状
後遺障害12級13号:局部に頑固な神経症状を残すもの
後遺障害14級9号:局部に神経症状を残すもの
神経症状とは、骨折により神経系統が圧迫されて、痛みやしびれが生じることです。後遺障害は、他覚的所見(検査や診察の結果など、客観的な資料に基づく医師の判断)があるかどうかによっても等級が変わります。
たとえば、後遺障害14級が認定されるには、自覚症状に加えて、医師の他覚的所見が必要なため、医師に自覚症状を正確に伝え、画像撮影をしてもらうことが大切です。
後遺障害が認定されるために
ここまでご説明してきたとおり、後遺障害にはさまざまな種類があり、その認定要件はそれぞれに異なります。
認定要件を満たすためには、症状を正確に医師に伝えるとともに、必要な検査結果等の資料を過不足なく認定機関へ提出することが重要です。
後遺障害が認定されるためには、専門的な知識が必要となるため、後遺障害に詳しい弁護士に相談するのも一つの方法でしょう。
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肋骨骨折で後遺障害が認定されたら
後遺障害が認定された場合には、将来にわたり発生する「逸失利益」と「後遺障害慰謝料」を請求することができます。
ここからは、逸失利益と後遺障害慰謝料の計算方法について、解説していきます。
逸失利益
逸失利益とは、交通事故による後遺障害がなければ、得られたはずの収入のことです。逸失利益の計算式は、次のようになります。
1基礎収入 × 2労働能力喪失率 × 3労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数 = 逸失利益
計算の基礎となる各項目についても、詳しく見ていきましょう。
1 基礎収入
基礎収入とは、交通事故にあう前に得ていた現実の収入のことです。現実の収入が賃金センサス(厚生労働省が発表している日本の賃金に関する統計のこと)における平均賃金以下の場合、平均賃金が得られる見込みの確実性が高い場合には、賃金センサスに基づく平均賃金を基礎収入とすることがあります。
2 労働能力喪失率
労働能力喪失率とは、労働能力の低下の程度のことです。この喪失率は、後遺障害の等級ごとに一定の割合が定められています。
3 労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数
労働能力喪失期間とは、症状固定日から労働能力が制限される期間のことをいいます。ライプニッツ係数とは、中間利息(※)を控除した係数のことです。過去の判例を基に、67歳まで就労が可能とされているので、症状固定日から67歳までの期間が対象となりますが、後遺障害の程度などによって期間が異なるため、注意が必要です。
肋骨骨折による変形障害の場合、労働能力に影響を与えるものではないことを理由に、相手から逸失利益自体を否定されてしまうことがあります。
また、神経症状の場合、12級13号では10年、14級9号では5年の労働能力喪失期間を相手から主張されてしまうこともあるため、逸失利益の交渉には高度な専門知識が求められる場合も考えられます。
- ※中間利息=被害者の方が将来取得予定だった利益を前倒しで受け取ることにより、現在と将来の間に発生する利息のこと
ケーススタディ
交通事故前年の収入が400万円の35歳男性の場合/後遺障害12級5号
- 後遺障害12級の労働能力喪失率⇒14%
- 67歳までの32年間のライプニッツ係数⇒20.389
以上のことから、逸失利益の計算式は、次の通りになります。
4,000,000円×14%(労働能力喪失率)×20.389(32年間のライプニッツ係数)=11,417,728円
後遺障害慰謝料
後遺障害慰謝料とは、後遺障害が残ったことによる精神的苦痛に対する損害のことです。後遺障害の等級に応じた賠償金額を請求することができます。
後遺障害慰謝料の3つの基準
後遺障害慰謝料の算定基準は、「自賠責保険基準」、「任意保険基準」、「弁護士基準(裁判所基準)」の3つがあり、基準ごとに受け取れる賠償金額が異なります。このなかで、もっとも高額となるのが弁護士基準です。
ケーススタディ
先述の「逸失利益」で紹介したケース(後遺障害12級)の場合、受け取れる賠償金額には、どの程度の差があるのでしょうか。自賠責保険基準と弁護士基準で比較してみます。
後遺障害等級 | 自賠責保険基準 | 弁護士基準 |
---|---|---|
第12級 | 94万円 (93万円) | 290万円 |
- ※()内は2020年3月31日以前に発生した事故の場合
自賠責保険基準による後遺障害12級の後遺障害慰謝料は、94万円です。これに対して、弁護士基準による後遺障害12級の後遺障害慰謝料は、290万円となります。したがって、弁護士基準を用いるだけで、196万円もの増額を期待できるのです。
適正な賠償金を得るために
このように、逸失利益の計算や後遺障害慰謝料の請求には、専門的な知識を必要とします。
また、多くの保険会社では、自賠責保険基準もしくは、任意保険基準によって後遺障害慰謝料を計算することが多く、弁護士基準は、“弁護士に依頼した場合”という限られたケースで適用されます。
そのため、適正な賠償金を受け取るためには、弁護士に依頼することも大切になるのです。
まとめ
肋骨骨折により後遺障害が残ってしまった場合、その後遺障害の程度や用いる算出基準によって、受け取れ賠償金額は大きく変わるということが、本コラムを通しておわかりいただけたかと思います。交通事故被害の示談交渉に詳しい弁護士に依頼することで、適正な賠償金額を獲得できる可能性が高まるとともに、保険会社との交渉といった面倒な手続からも解放されます。
後遺障害等級や賠償金について、少しでも疑問を感じられる方は、ぜひアディーレ法律事務所にご相談ください。