現役弁護士が教える!交通事故で損しない慰謝料獲得の7つのポイント
交通事故の被害者になった際に支払われる損害賠償金の一つに、「慰謝料」があります。これは、交通事故によってケガを負ったことや、後遺症が残ったことに対する精神的・身体的苦痛を補填するためのものです。
慰謝料の算定方法や獲得のポイントなどを知っておくことで、本来受け取れるはずのお金をもらい損ねずに済む可能性があります。今回は、損をしない慰謝料獲得の7つのポイントについてご説明します。
- この記事でわかること
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- 交通事故の慰謝料金額の基準がわかる
- 入通院慰謝料を獲得するためのポイントがわかる
- 後遺症慰謝料を獲得するためのポイントがわかる
- 目次
慰謝料の種類
交通事故の被害にあったとき、加害者に請求できる慰謝料は3つあります。
入通院慰謝料
入通院慰謝料とは、交通事故で負ったケガを治療した場合に請求できる慰謝料です。
後遺症慰謝料
後遺症慰謝料とは、交通事故によりケガを負ったあと、十分な治療をしたにもかかわらず後遺障害が残ってしまった場合に、後遺障害の症状や程度に応じて請求できる慰謝料です。
死亡慰謝料
死亡慰謝料とは、交通事故によって被害者が死亡してしまった場合に、請求できる慰謝料です。
以下では、主に入通院慰謝料や後遺症慰謝料について、加害者に適切な金額を請求するためのポイントをお伝えいたします。
慰謝料額を決めるための3つの基準
入通院慰謝料、後遺症慰謝料、死亡慰謝料のすべてに共通して、慰謝料額を算定するための3つの基準があると言われています。
- 自賠責保険基準
- 弁護士基準
- 任意保険基準
それでは、基準ごとに詳しく見てみましょう。
自賠責保険基準
自賠責保険基準とは、強制加入保険である自賠責保険から支払われる慰謝料の算定基準です。自賠責保険会社は、最低限の金額を簡易・迅速に支払うことを目的にしているため、一般的に算定の計算式が簡単で、金額が低くなりやすいことが特徴です。
入通院慰謝料については、「通院期間」と「実際に通院した日数の2倍」のうち少ないほうに4,300円をかけて計算します。ここで注意すべき点は、自賠責保険には支払上限額(傷害については120万円)が定められており、この上限額の範囲内で治療費や休業損害等もまかなわれる点です。たとえば、ケガの治療費だけで上限の120万円に達してしまうと、入通院慰謝料は1円ももらえないということになります。
一方、後遺症慰謝料については、自賠責保険会社が認定した後遺障害の等級に応じて支払額が定められています。
弁護士基準
弁護士基準とは、裁判や弁護士が代理人として交渉する際に認められる慰謝料の算定基準です。
入通院慰謝料については、自賠責保険基準とは異なり、1日いくらという形で定められておらず、日数が増えるほど金額の増加率が緩やかになるような計算方法になっているのが特徴です。一般的には、自賠責保険基準や後述する任意保険基準よりも高額になります。
また、ケガの程度に応じて、骨折などで用いられる基準と、むち打ちなどで用いられる基準の2種類があるという点も自賠責保険基準と異なります。
ただし、被害者にも過失がある場合など、自賠責保険基準のほうが高額になるケースもあります。
後遺症慰謝料については、後遺障害の等級に応じて基準額が決まるので、自賠責保険基準と異なるのは基本的に金額だけです。もっとも、実際に裁判になった場合には、諸般の事情に応じて慰謝料額が増減されることもあります。
任意保険基準
任意保険基準とは、各保険会社が独自に定めている慰謝料の算定基準です。
入通院慰謝料については、基本的に弁護士基準と似たような形で、日数が増えるほど金額の増加率が緩やかになり、ケガの程度によって2種類の表が作成されていることが多いように思います。
一般的には、入通院慰謝料、後遺症慰謝料ともに、自賠責保険基準より高く、弁護士基準より少ない金額が設定されているという印象です。
適切な入通院慰謝料を獲得するための4つのポイント
適切な入通院慰謝料を獲得するためには、覚えておくべきポイントがあります。
たとえば、「通院期間」です。
弁護士基準で請求する場合には、原則として通院期間をもとに算定します。ここでいう「通院期間」とは、病院に行った回数ではなく、「病院に行っていない日も含めたトータルの通院期間」で計算するのが重要な要素です。
ただし、通院期間が長期にわたる場合は、症状や治療内容、通院頻度をふまえ、実際に通院した日数の3倍ないしは3.5倍した日数に制限されることもあります。
下記では、上記以外のポイントについて具体的に見ていきます。
ポイント1 整形外科に通院すること
事故でケガをすると、整骨院や接骨院、マッサージ店などに通われる方もいらっしゃいます。もっとも、これらの施術は医師の指示がない場合は、そもそも損害として認められず、治療期間としてカウントされない可能性があります。したがって、可能な限り、整形外科などの病院に通うことをおすすめします。
医師の指示に従ったものであっても、一部は認められたが、支払った費用のすべてが損害だと認められなかったという裁判例も多くあります。
ポイント2 定期的に通院すること
自己判断で治療を中断してしまい、長い期間(よく言われるのは1ヵ月以上)通院していない時期があると、治療中断のタイミングで治療が終了したとみなされてしまい、それ以降は通院しても損害として認められない可能性があります。治りきっていないのに治療を中断しまい、そのあと痛みがぶり返すことはよくありますが、そこから慌てて通院を再開しても、慰謝料はもちろん、治療費すら請求できなくなってしまうこともあります。そのため、医師の指示に従い、定期的に通院することが重要です。
ポイント3 症状固定を医師に判断してもらうこと
入通院慰謝料は、症状固定と呼ばれるタイミングまでの期間をもとに算定されます。症状固定とは、症状がこれ以上よくならない状態にあることを指し、完全に痛みが消えるまで治療を継続できるわけではありません。この症状固定のタイミングは、最終的に裁判所が判断するものですが、裁判所が症状固定を判断するにあたってもっとも重視するのは、医師の見解であると言われています。
ですので、裁判の前段階である示談交渉でも、医師の意見が尊重されるケースが多いのです。保険会社が被害者に対して、「そろそろ症状固定にしませんか?」と打診して、症状固定日を決めようとしてくることもありますが、安易にこれに応じず、主治医の先生にしっかりと症状を伝えて、適切な治療期間を判断してもらうことが重要です。
ポイント4 通いすぎないこと
慰謝料を多く獲得しようとして、それほど痛みがあるわけでもないのに頻繁に通院する人がいるという話を耳にすることがあります。しかし、そもそも不必要な通院をして慰謝料を稼ごうとするのは、保険金詐欺にあたる可能性があります。
また、入通院慰謝料は、原則として通院期間で算定されることになるので、毎日のように病院に通っても慰謝料は増えていきません。それどころか、治療費が余分にかかってしまうので、反対に早期の治療打ち切りを誘発してしまう原因にもなりえます。医師の指示に従って、もっとも治療に効果がある形で通院することが重要です。
適切な後遺症慰謝料を獲得するための3つのポイント
後遺症慰謝料は、どの基準においても原則として、認定された後遺障害の等級に応じた金額が支払われます。ですので、とにもかくにも、適切な等級の認定を受けることが重要となります。
具体的なポイントは3つあります。
ポイント1 病院で必要な検査を受けること
適切な後遺障害の等級が認定されるためには、必要な検査を受ける必要があります。ここで注意したいのは、適切な治療を受けるために必要な検査と、適切な等級認定を受けるために必要な検査に若干のズレがあることです。
たとえば、事故によって腰椎に圧迫骨折が生じた場合、医師が適切に治療をするという観点からすると、圧迫骨折があるということさえわかれば、ひとまず治療を始めることは可能です。
しかし、適切な等級認定を受けるためには、その骨折が事故を原因とするものであること(≒新鮮骨折であること)がわかるような検査をする必要があります。このように、交通事故によってケガを負った場合、そのケガから生じうる後遺障害を予想し、それを見据えた検査が必要となるのです。
ポイント2 医師に自覚症状を正しく伝えること
適切な後遺障害の等級認定を受けるためには、自覚症状を正しく伝えることも極めて重要です。後遺障害は、事故によって生じた痛みやケガが治らずに、そのまま残ってしまった場合に認定されるものですので、当初訴えていなかった症状をあとから伝えても、事故が原因だと認めてもらえず、後遺障害の認定対象外になってしまうおそれがあります。
たとえば、最初は首が中程度の痛みで、腕に骨折による強い痛みがあり、治療によって腕は骨がくっついて治ったけれども、首にはそのまま痛みが残ったとします。このとき、治療開始時に、特に痛みの強い腕ばかりを気にして、首の痛みを伝えそびれていたとすると、「首の痛みは事故によって生じた痛みではない」と判断され、後遺障害の認定対象外になってしまうという事態になりかねません。
少しでも痛みやしびれなどの症状がある場合は、自分で症状が軽いと判断してしまわずに、医師に自覚症状を漏れなく正確に伝える必要があります。
ポイント3 適切な資料を提出すること
後遺障害の認定について、自賠責保険会社に申請すると、損害保険料算出機構が後遺障害の等級を認定することになります。この申請方法には、「事前認定」と「被害者請求」の2つがあります。
事前認定とは、保険会社を通して、保険会社が保有している事故の資料をそのまま自賠責保険会社に提出して審査してもらう方法です。これに対して、被害者請求は、被害者本人または被害者の代理人弁護士などが自賠責保険会社に直接、事故の資料を提出して審査してもらう方法です。
申請書類は自分で選択できるので、あとから必要な資料や意見書などを追加することもできます。基本的には提出した資料をもとに後遺障害が認定されるので、適切な資料を提出することは、より正確な等級の認定にあたり極めて重要になるのです。
まとめ
このように、慰謝料を適切に獲得するためには、ケガの治療中から先を見据えた行動をすることが大切です。また、治療後であっても、弁護士に依頼して弁護士基準で慰謝料を請求することで、より適切な慰謝料を獲得することができます。もし事故にあっても損をしないよう、上述した7つのポイントを覚えておきましょう。
アディーレ法律事務所では、治療終了後の慰謝料増額交渉はもちろん、ケガ治療中という早い段階からのご相談も承っておりますので、適切な後遺障害認定のためのお手伝いもできます。交通事故の被害にあわれた方は、ぜひ一度アディーレ法律事務所までご連絡ください。